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ウディネ流マネーボールで奪首!巧みな補強と育成力

[ 2011年12月13日 06:00 ]

<ウディネーゼ・キエーボ>後半34分、2点目のゴールを決めたバスタ(左から3人目)を祝福するウディネーゼイレブン

セリエA ウディネーゼ2-1キエーボ

(12月11日)
 ウディネーゼが11日にホームで行われたキエーボ戦を2―1で制し、暫定首位に浮上した。今夏の主力放出で苦戦が予想されながら、巧みな補強と育成でカバー。元イタリア代表FWアントニオ・ディナターレ(34)が得点ランク首位に並ぶ今季10点目で貢献し、プロビンチャ(地方都市)の星が優勝争いで奮闘している。

 相手の堅守に苦戦はしたが、終わってみればまたも白星。7戦目のホームで全勝を守った。引き分け止まりの王者ACミランに勝ち点2差をつけ、12日にローマ戦を控える名門ユベントスもかわして暫定首位。グイドリン監督は「魔法の瞬間が続いている」と笑った。

 予想外だ。昨季4位とはいえ、今季開幕を前にFWサンチェスをバルセロナに移籍させるなど前線、中盤、守備の軸をそろって放出。今夏の移籍市場でセリエA最高の移籍金6600万ユーロ(約68億円)を荒稼ぎした一方で、補強には1010万ユーロ(約10億円)しか投じなかった。欧州CLプレーオフではアーセナルに敗れてファンから批判が噴出。指揮官が今季の目標に掲げた勝ち点は残留ラインの「40」だった。

 ところがパルメイラス(ブラジル)から獲得したDFダニーロがビジャレアルに移籍したサパタの穴を埋め、インレルがナポリに去った中盤はいずれも23歳のアサモアとイスラが成長。カウンターの連係を深めて攻撃力も維持し、指揮官は「試合ごとに選手が経験を増して成長する」という。

 有望な若手を発掘、育成して強豪に売却する育成型クラブ。ノウハウ確立に一役買ったのが95~98年に率いた現日本代表のザッケローニ監督だ。のちのドイツ代表FWビアホフを開花させて98年にクラブ史上最高のリーグ3位に入り、師弟コンビでACミランへのステップアップを実現した。

 その後も世界中にスカウト網を広げ、国際色豊かな若手はスロベニアとの国境に近く、人口10万人に満たない地方都市ウディネで強い重圧を受けることなく成長。年俸上限を100万ユーロ(約1億円)に抑え、育成&売却のサイクルを確立した。昨夏ユベントス移籍がクラブ間合意に達しながら「家族は心地よい暮らしができている。移籍する理由はない」と残ったディナターレは例外的存在だ。今季は3季連続リーグ得点王を狙うその大黒柱と、新たに移籍市場の注目株となった野心的な若手が快進撃を支える。

 「順位表を見るのが楽しみ。可能な限りこの状態を続けたい」とグイドリン監督。優勝未経験の伏兵から目が離せない。

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