おとこ気あふれる笹田師の“かわいい”一面

[ 2026年4月23日 05:27 ]

ホワイトボードに前週の重賞を制した馬、調教師の名を記す笹田師
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 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の入矢美奈(32)が担当する。来春に定年引退を迎える笹田和秀師(69)を取材。見た目とはギャップの「字」で15年以上にわたり、重大任務を担当している。その秘密に迫った。

 ベテラン菱田記者からむちゃぶり!?された。大先輩がニコニコしながらつぶやく。「これ次の“書く書く”で頼むわ」。送られてきたLINEに添付された写真には誇らしげにほほ笑む笹田師とホワイトボードが映し出されていた。

 「字、めっちゃ奇麗やろ?」

 確かに、その文字は奇麗で、かわいらしい。「えっ!?これ笹田先生の字?」。思わず声が出た。

 笹田師と言えば、見た目はちょっぴり強面(こわもて)で元体育会のオーラが全開。そのギャップに正直、驚いた。

 駆け出しとはいえ、記者魂がにわかに騒ぐ。かわいらしい文字の原点を探るべく、笹田師にまつわる謎について直撃取材した。

 「先生、なぜこんな奇麗な字なんですか?お習字とか、されてました?」

 「習字もそろばんも習わされていたけど一日でやめたわ(笑い)。なんで奇麗か?それは教えられんな」

 まさかの閉店ガラガラと思いきや、心優しい先生は間髪入れずに衝撃的な理由を明かしてくれた。

 「小学生の頃、女の子に宿題してもらっていて、それがバレないように字をまねたんや」

 時は昭和。場所は広島。令和の現代なら代役なんて不適切にもほどがあるが、宿題を誰かに頼むなど当たり前の時代!?先生にバレないように女子の文字をまねるあたりに、現代の草食系男子にはない、たくましさを感じてしまう。

 勉強面も学年でも上位だったと言うが、スポーツも万能。盈進高(広島)ではサッカー部に所属。22年夏に野球部が甲子園出場を果たしたスポーツ名門校のグラウンドで汗を流した。

 卒業後に進んだ拓殖大学では少林寺拳法部に所属。なんと4段の腕前という超武道派。書けないような武勇伝もたくさん。そんな何でもできちゃう器用さが不器用な私にはうらやましい。

 多くの調教師が陣取るトレセンの調教スタンド2階には前週の重賞Vを祝福すべく、トレーナーの名前と勝ったレース、馬名を記すホワイトボードがあり、その書き手を任されて15年だから大ベテランの域。心を込めて、勝者を称えてきた重大任務も定年を来春に控え、あと1年を切った。後任は達筆を買われた牧田師。今月4日、管理するスズハロームがダービー卿CTで重賞勝利。ホワイトボードに目をやると、笹田師が笑いながら教えてくれた。

 「(牧田師が)自分で書くのは恥ずかしいやろうから俺が書いてあげようと思っていたのに、もう牧田、自分で書いてたわ」

 気付けば笹田師と私の周囲に多くの調教師が集まり、笑顔があふれ、和気あいあいとしたムード。取材しやすい温かい空気に、未熟者は助けられています。

 定年後、第二の人生のプランも具体的に決まっているという。宮崎に移住し趣味の釣りを楽しむ。おとこ気にあふれ、同時に繊細さを併せ持つ。輝く瞳に、過去の栄光にすがることなく、未来だけを見つめる男の生きざまを見た気がした。残り約10カ月。「恥ずかしい」と照れながらも重賞制覇を飾り、自ら「笹田和秀」と書き込める瞬間が来ますように。一度はむちゃぶり!?と思った菱田さんのおかげで、すてきな話が聞けました。

 ◇笹田 和秀(ささだ・かずひで)1956年(昭31)9月29日生まれ、広島県出身の69歳。80年3月に栗東・島崎宏厩舎のスタッフになり、83年12月に伊藤雄二厩舎へ。攻め専(調教騎乗がメイン)の助手としてウイニングチケットやエアグルーヴ、ファインモーション、エアメサイアなどG1馬に携わる。師の定年引退による厩舎解散に伴い、07年3月に梅田智之厩舎へ。08年、調教師試験に合格し、09年3月に開業。JRA通算3591戦292勝、うち重賞はエリンコート、ダンスディレクター、エアスピネルなどで9勝。

 ◇入矢 美奈(いりや・みな)1993(平5)9月21日生まれ、大阪府出身。18年入社で7年半、紙面のレイアウトを担当。昨年10月から競馬担当。高校は創作ダンス部、大学では応援団バトン・チアリーダー部の超舞踊派。
 

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