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【菊花賞】ステラヴェローチェ95点「アゴを出す」余裕の立ち姿、横綱の風格

[ 2021年10月19日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<菊花賞>横綱の風格を見せるステラヴェローチェ
Photo By スポニチ

 余裕の立ち姿に菊の大輪が咲く。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第82回菊花賞(24日、阪神)ではステラヴェローチェをトップ指名した。17日の秋華賞でアカイトリノムスメ(優勝)に唯一満点を付けた達眼が菊の有力馬から読み取ったのは――。皐月賞、ダービーの春2冠はいずれも3着に泣いたが、心の余裕と成長力でクラシックの大輪を咲かせる時が来た。

 身体を用いた慣用句は人と馬で真逆の意味を持つことがあります。たとえば、「アゴを出す」。辞書には「疲れ切った状態」とあります。長距離を歩き続けているうちに腰が引けてアゴが出る格好になってしまうところから疲労を意味する慣用句になりました。でも、馬が出すアゴには別の意味があります。

 先週撮影したステラヴェローチェの写真を見てください。アゴを突き出しながら立っています。アゴと連動して両耳がハの字に開き、ハミをゆったりと受けている。四肢を見れば、力をスッと抜いて脚をそろえている。この一連の動作が意味するのは余裕です。ちなみに、今春はどうだったのか。皐月賞、ダービー時の写真を見直してみると…。両レースともアゴを出さずに正常な姿勢で写真に納まっていました。

 全盛期の横綱・白鵬(間垣親方)が大一番前に見せていたような余裕の立ち姿です。3歳のひと夏を越して気性が成長したのか。それとも体が楽になったのか。理由は定かではありませんが、気持ちにゆとりが生まれたのは間違いないでしょう。

 菊花賞を勝つために欠かせない条件が3つあります。1つは長距離戦のゆったりした流れを力まずに落ち着いて走れる心の余裕。2つ目は3歳夏を越しての成長力。3つ目は長距離戦を克服するスタミナ。アゴを出した立ち姿から1つ目の条件を満たしていることがうかがえます。

 ひと夏越して馬体も見違えるほど成長しました。首と肩、トモの筋肉量が今春よりも増えているのがひと目で分かります。腹にもボリュームが出て、白鵬みたいにどっしりしてきた。先週の秋華賞では3歳のひと夏で“成鳥”したアカイトリノムスメに唯一満点を付けましたが、菊花賞ではこの馬の成長度が一番。菊花賞を勝つための2つ目の条件も満たしています。

 問題は3つ目の条件、長距離戦を克服するスタミナです。胴が詰まり気味のマイラー体形だけに3000メートル向きとは言えません。ただ、血統は父バゴ×母の父ディープインパクトの中長距離型です。

 人間のように長距離を走っても疲れてアゴを出すことはないでしょう。競走馬が出すアゴは菊花賞を勝つために必要な心の余裕の表れですから。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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