【安田記念】グランアレグリア100点 みずみずしい張り保ち疲れまるでなし

[ 2021年6月1日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<安田記念>グランアレグリアの立ち姿
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 中2週の強行軍でも短距離界の女王にダメージなし!鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第71回安田記念」(6日、東京)ではグランアレグリアをサリオスとともに満点評価した。達眼が捉えたのは、朝飯前の調教代わりに楽勝した前走・ヴィクトリアマイル時と変わらない立ち姿。G1連覇が大きく近づいた。

 「朝飯走馬」(あしいはいんま)と呼ばれる名馬伝説が沖縄に残っています。琉球王朝時代、本島中部の伊波(現うるま市石川伊波)という村に希代の快速馬がいました。どれほど速いかといえば、伊波―首里間約30キロの道のりを朝飯を作っている間に往復し、涼しい顔で朝カイバを食べたそうです。そこで「朝飯走馬」と命名されたことが18世紀の地誌「琉球国由来記」にも記されています。

 そんな名馬伝説を想起させるのが希代の快足牝馬グランアレグリア。わずか2週前にG1ヴィクトリアマイルを勝ったばかりだというのに、どこにもダメージが残っていない。前後肢の分厚い筋肉は岩のように隆起し、みずみずしい張りを保っています。牝馬は疲労をためると、腹がしぼんでくるものですが、充電を終えた休養明けの馬のようにフックラしている。毛ヅヤも抜群。初夏の日差しにまぶしい輝きを放っています。

 気性に変化はないか。レース間隔が短いと、牝馬はストレスや疲れで力みやすいものです。立ち姿を見ると…。ゆったりとハミを受けながら涼しい顔を浮かべています。中2週のローテーションでも心身にダメージが残っていない。その理由は一つ。競馬が楽だったからです。

 朝食をとる前のわずかな時間でできるたやすいことを「朝飯前」といいます。希代の快速馬にとってヴィクトリアマイルを勝つのは朝飯前だったのでしょう。琉球王国の快足馬にとって伊波―首里間の往復が朝飯前だったように…。

 ヴィクトリアマイルとの違いが一つだけあります。トモ(後膝からスネの部分)の筋肉にくっきりと血管が浮き出ています。前走時にはここまで目立ってなかった。薄い皮膚を持つ馬が調教で鍛え込まれると、こういう血管が映るのです。前走のG1は朝飯をとる前の調教代わりだったのでしょう。

 朝飯走馬を祭った聖地「朝飯森御嶽」(あしいむい・うたき)が首里に現存しています。地元の馬関係者が参拝に訪れるとか。今日まで語り継がれる名馬伝説。グランアレグリアも後世まで伝わる名牝にふさわしいスーパーボディーです。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2021年6月1日のニュース