【エ女王杯】小島太騎手 満身創痍で見せた95年サクラキャンドル快勝劇

[ 2020年11月13日 05:30 ]

95年エリザベス女王杯、小島太騎乗のサクラキャンドル(中央)は10番人気から勝利した
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 【競馬人生劇場・平松さとし】現在3歳以上の牝馬、芝2200メートルになっているエリザベス女王杯(G1、京都競馬場=今年は阪神開催)。牝馬限定に変わりはないものの、秋華賞ができる以前の1995年までは3歳限定の芝2400メートル戦だった。

 そんな最後の旧エリザベス女王杯を制したのはサクラキャンドル。鞍上はその後、調教師となり、現在はすでに引退された小島太氏だった。

 「理想通りの競馬ができました。自分で言うのも何だけど、馬の気持ちに合わせて最高に上手に乗れたと思います」

 単勝26.5倍、10番人気での快勝劇に満面の笑みでそう語ったものだった。

 しかし、その後、調教師となった小島氏の口から思わぬ事実を聞かされた。

 「正直、当時は満身創痍(そうい)で騎乗していました。競馬にいけばちゃんと乗れていたけど、昔の落馬の影響で普段は手や首に痺(しび)れが残った状態で生活をしていたんです」

 翌96年、小島太騎手は調教師試験に合格。新たな道を歩むことになる。手や首の痺れが果たして調教師転身にどのくらいの影響を与えていたのかは分からないが「騎手でいる間は、調教師を目指していることを誰にも気付かれないようにしました」と本人は語った。

 「だから調教師試験の願書提出とか、必要な手続きなども全て息子にやらせたものです」

 それが小島太“騎手”の美学だったのだろう。騎手を引退したばかりの頃、自らのジョッキー人生についてうかがうと「乗った数の割には大きいところを勝てたと思います。成績自体には満足しています」と答えた。実際のところ8476レースに騎乗して11度のG1制覇を含む重賞85勝、通算1024勝は立派な数字である。

 そんな実績の一つが、冒頭で記したサクラキャンドルによるエリザベス女王杯だ。今週末にはそのエリザベス女王杯が行われる。細かい条件は変更されたものの、小島太騎手のような好騎乗による好勝負を見たいファンの気持ちは変わらない。そんなレースが繰り広げられることを期待したい。(フリーライター)

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2020年11月13日のニュース