ご存じですか?オグリ、テイオー、オペラオーが疲れ癒やした“名馬の湯”

[ 2019年7月30日 05:30 ]

競走馬リハビリテーションセンターの全景(JRA提供)
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 「馬の温泉」をご存じだろうか。福島県にある「競走馬リハビリテーションセンター」に併設され、JRAの施設では函館競馬場と2カ所しかない競走馬専用の温泉。国内で唯一、現役競走馬のリハビリを行っているが、その全容はあまり知られていない。センターには、かつて夏の小倉を沸かせた“あの名馬”の姿も。令和初めての夏ならではのタイムリーな話題をお届けする新企画「ナツ☆ウマ」の今回は、ファンも楽しめる施設の詳細と現状を、塩瀬友樹所長(46)に聞いた。 

 福島県いわき市。映画「フラガール」の舞台にもなったいわき湯本温泉に競走馬リハビリテーションセンターはある。競走馬総合研究所・常磐支所として63年に開設。日本で唯一の現役競走馬のリハビリ施設で競走馬専用の温泉を併設。かつてはオグリキャップ、トウカイテイオー、テイエムオペラオーといった名馬が入所。東北屈指の名湯に漬かり疲れを癒やした。

 開設当初は湯治場の雰囲気が強く、筋肉痛や疲労の回復のための利用も多かったが、段階的にリハビリ施設を充実させ、最近は屈腱炎や骨折など重度の脚部疾患の馬が主流。リハビリ施設であることの理解を深めるため17年から呼称を追加した。年間に50~60頭が利用。取材した7月24日時点では26頭が入厩していた。40馬房あるが人手不足のため、入厩頭数を制限している状況。入所希望馬が多い時期には順番待ちも発生する。塩瀬所長は「どこの業界も一緒ですが、人材確保が一番の課題」と話す。

 リハビリは午前中が中心。ウオータートレッドミル、トレッドミル、ウオーターウオーキングマシンの3施設がフル稼働。「ケガからの回復に合わせて、細かくメニューを決めていく」と塩瀬所長。敷地内には1周400メートルのダートコースも設置され、リハビリの最終段階では騎乗調教を行って現場へと送り出す。リハビリ後はお待ちかねの“温泉タイム”。水深80センチ、38~40度の“足湯”に15分ほど漬かる。上部からは打たせ湯を浴び、実に気持ち良さそう。「リハビリ調教による筋肉の疲労を解消し、心もリフレッシュする温泉は療養効果が大きい」と同所長。中には前がきしてスタッフにマッサージを求める馬もいてほほ笑ましい。午後にはプールを利用した調教も行われる。

 故障馬の競走復帰を促す施設だが、一方で貴重な人材育成の場ともなっている。療養馬の世話をするスタッフは、厩務員など将来的に競馬サークルでの就職を目指す若者たち。馬と日々コミュニケーションを取りながら接し方、扱い方を学んでいる。今年のダービーを制したロジャーバローズを担当する角居厩舎・米林昌彦助手も、かつてここで技術を磨いた。センターは常時、見学者も受け入れている。塩瀬所長は「馬が懸命にリハビリに励む姿や、携わる人々の働きぶりを見て少しでも馬に携わる仕事に興味を持ってもらえれば」と話す。競馬場以外で現役競走馬を間近で見られる数少ない施設。夏の思い出づくりに温泉旅行とセットで、出掛けてみてはいかがだろう。

 ◆温泉 豊富な湯量を誇るいわき湯本温泉から湯を引き込んだ温浴施設。湯は38~40度に保たれ、1回15分ほど入浴。長時間入浴すると蹄がもろくなる馬もいるため、使用頻度は馬ごとに異なる。疲労回復、ストレス解消に効果がある

 《メイショウカイドウが訓練用乗馬》センターには05年に初の同一年小倉3冠(小倉大賞典、北九州記念、小倉記念)を達成したメイショウカイドウも乗馬としてけい養されている。現役引退後は小倉競馬場で誘導馬として活躍し、昨年から当地へ。乗馬といっても観光用ではなく訓練用。競馬サークルを目指すスタッフは職種によっては実技試験が課される。そのための訓練騎乗のパートナーを務めている。既に20歳。人間なら60歳を超える高齢だが「月に20日くらいは馬場に出ているので、年齢を感じさせない若々しい体です」と塩瀬所長。カイドウに加えエリモエクスパイア(07年天皇賞・春2着)、サムライブルー(現役時1勝)の3頭をけい養。金の卵たちの夢の実現に一役買っている。

 【競走馬リハビリテーションセンターの施設】

 ▼ウオータートレッドミル スロープ付きの水深120センチの細長い水槽の底にベルトコンベヤーを設置。馬は腹まで水に漬かって、1回約15分のリハビリ調教を行う。ケガからの回復状況に応じて速度と時間を調節する。浮力により脚部への負担が約30%軽減。主にリハビリの初期段階で使用される。

 ▼トレッドミル ジムで見かけるランニングマシンの競走馬用。最大時速50キロでの走行が可能(センターでは時速36キロまで)で、最大10%の傾斜もつけられる。ケガからの回復が進んだ馬がウオータートレッドミルの次のリハビリ機器として活用する。

 ▼ウオーターウオーキングマシン 直径12・5メートル、水深約50センチの浅いプールの中を歩行させる機器。回転する柵が後ろから迫るため、馬は止まらずウオーキングを続ける。脚部をアイシングしながら運動することができる。主にトレーニング後のクーリングダウンに使用。

 ▼スイミングプール 1周約40メートルの円形プール。水深は3メートルで、競走馬でも脚はつかないが、馬は比重が水より軽いため、溺れることはない。心肺機能の維持やリフレッシュが主な目的で、人間が扶助しながら1セット4、5周する。5~10月(本年は9月)の運用で冬季は閉鎖する。

 ▼調教馬場 1周400メートルのダートコース。各競馬場と同じ青森県六ケ所村産の砂を使用。リハビリの最終段階となる騎乗調教を行う。調教馬場で騎乗負荷をかけても、ケガをした部位に再発につながる兆候が認められなくなるとセンターでのリハビリは終了となる。

 【行かれる方へ】福島県いわき市 鉄道ならJR常磐線の湯本駅下車。タクシーで約15分。車なら常磐道いわき湯本ICから約10分。見学は平日の午前9時から午後5時。個人なら予約は不要。リハビリ見学は午前中。プール調教は午後1時30分から実施される。入り口横ではポニーのミミちゃんが出迎えてくれる。詳細は公式HPで確認を。電話での問い合わせは競走馬リハビリテーションセンター総務係=(電)0246(43)3185=まで。

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