【桜花賞】ファンタジー100点!「麗光」しなやか曲線美

[ 2019年4月2日 05:30 ]

<桜花賞>ダノンファンタジー
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 ターフ界は「麗光」、「太成」の新時代を迎える。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。クラシック第1弾「第79回桜花賞(7日、阪神)」ではダノンファンタジーに唯一100点満点、グランアレグリアに次位の95点をつけた。達眼お墨付きの2強のボディーを元号風に漢字2文字に置き換えて解説する。

 新元号が「令和」に決まりました。インターネットでは元号を予想する動きが白熱し、安久、安永などが予想上位に入っていましたが、万葉集(梅の花の歌)から採用された美しい言葉の響き。梅の花のように明日への希望を咲かせる国でありますようにと、願わずにはいられません。新時代の幕開けを祝うムードの中でゲートインする桜花賞。その有力候補の馬体を元号風に漢字2文字で表すなら…。ダノンファンタジーには「麗光」と付けます。

 思わず息をのむ流麗なシルエット。背中からトモ(後肢)にかけての弾力性に満ちた、しなやかな曲線美は芸術です。端麗に抜けた首差し、秀麗で滑らかな肩の傾斜…。イスラボニータやソウルスターリングの絵画的な美しさとはちょっと違う。肉感的な造形を伴った彫刻的な美しさと言うべきか。パリのルーブル美術館で展示されているミロのヴィーナス像を思い起こす柔らかな丸みを帯びた肉体美。トモが自己主張するように丸く盛り上がっています。

 昨年の阪神JF時はトモよりも全身を覆った冬毛の方が目立っていました。紫外線を受けてくすんだ絵画のように色落ちした姿でしたが、春の訪れとともに冬毛が奇麗に抜けています。トモの筋肉も一層力強く発達してきた。成長したトモのパワーを推進力に換える飛節は大きさも角度も絶妙です。

 立ち姿には力みが全くありません。ハミを適度な強さでかみ、耳をしっかり立てて集中力を示しています。牝馬にしては太い尾を自然に垂らして平常心を伝えています。

 背中と腹下が短めのマイラー体形。この先に控えるオークスの2400メートルでは体形的な限界を乗り越える精神力が問われますが、桜花賞の舞台に注文は付きません。春の柔らかい陽光がヴィーナス像のように麗しいボディーラインを引き立て、丸みを帯びたトモの筋肉を浮き立たせています。冬毛の抜け切った鹿毛を輝かせています。新時代の幕開けを告げるクラシック第1弾は「麗光」に包まれながらゲートインを迎えます。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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