タレンティドガールで牝馬3冠阻止 職人栗田博師さらば

[ 2019年2月22日 05:30 ]

今週で引退する栗田師(撮影・平松さとし)
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 【競馬人生劇場】1987年のエリザベス女王杯。ファンは牝馬3冠達成の瞬間を目に焼き付けようとしていた。

 王手をかけていたのはマックスビューティ。桜花賞は2着に8馬身差をつける楽勝ぶり。オークスで2冠を達成すると、秋には牡馬相手の神戸新聞杯を優勝。さらに前哨戦のローズSも勝利して8連勝中。エリザベス女王杯は単勝1・2倍の圧倒的1番人気に推されていた。

 しかし、虎視眈々(たんたん)と逆転を狙っていたのが当時39歳になったばかりの若き指揮官・栗田博憲師。4番人気のタレンティドガールを送り込んでいた。

 「まともに勝負したらかなわない。だから“馬体を接しないように出し抜けをくらわそう”と(故蛯沢誠治)騎手と相談しました」

 この策がズバリと当たる。ラスト200メートルで完全に抜け出したマックスビューティにゴール寸前襲い掛かったのはタレンティドガール。最後は悠々とかわして調教師にとっても初となるG1勝ちを記録してみせた。

 それから27年後の2014年4月20日。中山競馬場へ向かう栗田博師は1曲の音楽を繰り返し聴きながらハンドルを握っていた。

 スティービー・ワンダーの“I just called to say I love you”だ。この曲は師がタレンティドガールでエリザベス女王杯を制した時、JRAから記念にもらったビデオにBGMとして収録されていた思い出の曲だった。

 この日、行われた皐月賞を栗田博師はイスラボニータで勝利。自身6度目のG1制覇が、師にとって最後の大きな勲章となった。

 そんな伯楽も70歳の定年を迎え、今週末の競馬が最後になる。また一人、職人が競馬場を去るのは残念でならない。(ターフライター・平松さとし)

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2019年2月22日のニュース