“土佐の魔法少女”別府「やるべきことは一緒。思い切って!」

[ 2019年2月13日 05:30 ]

菜七子G1初騎乗記念連載(2)

藤田菜七子(右)と別府真衣
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 スタートがうまく当たりが柔らかい。そんな鮮やかな騎乗ぶりから“土佐の魔法少女”と称される高知競馬の別府真衣。05年のデビュー以来、女性騎手史上最速&最年少で700勝を達成。14年にはクロスオーバーでJRA・G3チューリップ賞に参戦(12着)。日本人女性騎手のJRA重賞騎乗は01年七夕賞の牧原由貴子(レイズスズラン=16着)以来12年8カ月ぶりだった。活躍は枚挙にいとまがないが、もちろん別府に魔法は使えない。負けん気の強さを武器に、努力を重ねて一歩一歩上ってきた。

 騎手学校時代も、最初は2回しかできなかった懸垂を体育館に通い詰めて練習し、同期の中で常に一番になるほどできるようになった。デビュー当時は「調教師の娘としか言われなかった」と別府。成績を挙げてもそう言われるもどかしさも味わった。11年には「父がいないところで、どれだけやれるか試したい」と韓国ソウルで期間限定騎乗。「どんな面でも負けたくないと考えていた。男性とも同じと思っている」。韓国では体重42キロと言うと数字だけで非力と決めつけられたが、それもステッキ一本で乗り越えた。

 別府と藤田菜七子の初対戦は16年3月15日。高知競馬3Rでは、1番人気に騎乗した菜七子を2番人気の別府が差して勝利。先輩の貫禄を見せた。「デビューから間もないのに、初めての高知でも乗るごとに対応が上手になっていった。のみ込みが早い」と後輩を高評価する。

 自身は15年南部杯(ニシノカチヅクシ=15着)でG1を経験。JRA騎乗も、同認定レースがなかった高知の騎手ではまず経験できないG1級とも言える舞台だ。「思い切って乗ってほしい。G1も同じレース。私もJRAで乗ったときに何もせずに終わるのは嫌と思ったけど、騎手がやるべきことはどこでも一緒。いいレースをすること。実はJRAは凄すぎて逆に緊張しなかった。地元重賞で人気馬に乗る方がずっと緊張する」。当時の裏話を明かしながら「でも緊張もしちゃうよね。頑張れ!」と菜七子を思いやった。

 少女と呼ばれた別府もキャリア15年目。昨年結婚もした。「体の変化も感じるし、子供も欲しいと考えたり。(宮下)瞳さんが道をつくってくれたので気持ちは楽かな。以前、旦那さんに“私が辞めたらどうする?”と聞いたら“後悔はしないように。辞めたら辞めたで俺が頑張る”と言ってくれて気持ちが楽になった。今は一頭一頭をしっかり乗るようにしている」。

 3日、高知5Rをルナマティーノで勝った別府は「乗り難しいタイプだから凄くうれしい」と笑顔。少女から成熟した腕を持つ一人の騎手へ。目指す道に男も女もない。

 ◆別府 真衣(べっぷ・まい)1987年(昭62)12月8日生まれ、高知県高知市出身の31歳。高知競馬・別府真司厩舎所属。父は別府真司調教師。05年10月9日、高知3Rセンターカノンで初騎乗V。08年トレノ賞(高知)をロマンタッチで勝ち、重賞初制覇。韓国、マカオなど海外でも騎乗経験があり、14年チューリップ賞(クロスオーバー=12着)でJRA初騎乗。地方7590戦714勝、JRA1戦0勝(12日現在)。1メートル51、血液型O。18年9月13日に同僚騎手の宮川実と結婚。夫婦共通の趣味は釣りとサーフィン。得意料理はだし巻き卵。とにかく歌がうまい!

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