吉行和子さん 90歳で死去、肺炎 幅広い演技が魅力の女優 42歳で主演の映画「愛の亡霊」が転機に

[ 2025年9月10日 04:00 ]

吉行和子さん
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 映画やテレビ、舞台で長年活躍した女優の吉行和子(よしゆき・かずこ)さんが2日午前0時19分、肺炎のため都内の病院で死去した。90歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。昭和初期の詩人吉行エイスケ、美容家あぐりさんの長女。兄は作家の淳之介さん、妹は作家で詩人の理恵さん。自立した女性から包容力ある母親や祖母役、妖艶な悪女まで幅広い役柄をこなした。

 名女優が静かに旅立った。訃報は故人の意向で親しい仕事仲間にも知らされなかった。

 吉行さんは今年2月、映画「あなたの息子ひき出します!」の撮影に参加。体調に大きな問題もなく過ごしていたが、数カ月前に脚を骨折し入院。一時退院したが、夏ごろに持病が悪化したため大事を取って再び入院。銀座のタウン誌「銀座百点」内で隔月連載していた親友で女優の冨士眞奈美(87)との往復書簡の原稿を執筆するなど、病室でも亡くなる10日前まで仕事を行っていた。直前も近親者と会話しており、近親者に見守られながら眠るように息を引き取ったという。葬儀に参列した知人は「棺の中でもお花に囲まれ、きれいなお顔をされていました」と話した。

 小児ぜんそくで病弱だったため、本好きな少女だった。中学3年生の時に母と初めて見た新劇の舞台に魅了され、1954年に劇団民芸に入所。衣装係にでもなれればいいと思い出願したが、女優候補として採用された。55年に「ものいわぬ女達」で初舞台。57年「アンネの日記」の主役で注目を集め、今村昌平監督の映画「にあんちゃん」などで59年に毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した。

 転機は42歳だった78年に主演した映画「愛の亡霊」。前作にあたる「愛のコリーダ」の大胆で過激な性描写から、周囲からは出演を反対されたが「40歳を過ぎた女優には面白い役は回ってこない。このままでは普通のおばさんのような役ばかりになる」と役の幅を広げるため自ら進んで出演。不倫関係になった愛人と共謀し夫を殺害する人妻を体当たりで演じ、日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝くなど代表作の一つとなった。その後はそれまで演じることのなかった個性豊かな役を任されるようになり「『愛の亡霊』が第2のスタートになった」と振り返っていた。

 06年「佐賀のがばいばあちゃん」や08年「おくりびと」などの映画で存在感を発揮。ドラマでもTBS「3年B組金八先生」で教師役、フジテレビ「ナースのお仕事」でヒロインの看護師たちを見守る婦長役を好演した。仕事に関してわがままを言うことはなかった吉行さんだったが「同じような役は2回演じたくない」と女優として常に新しい役を求めていた。

 来年には映画「あなたの…」、同2月には「金子文子 何が私をこうさせたか」と2本の出演映画が控える。生前「ブレークした時期はなく、ずっと低空飛行だけど落ちないでやってきた」と語っていた吉行さん。女優業を全うした人生だった。

 吉行 和子(よしゆき・かずこ)1935年(昭10)8月9日生まれ、東京都出身。出演作に唐十郎さん作の舞台「少女仮面」など。92年から13年間続けた一人芝居「MITSUKO」は海外公演も行った。エッセイストとしても活躍。「どこまで演れば気がすむの」は84年に日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。02年毎日映画コンクール・田中絹代賞受賞。

 ◇愛の亡霊 1976年「愛のコリーダ」で世界に衝撃を与えた大島渚監督が、再び男女の性愛をテーマにした日仏合作映画。原作は中村糸子の小説「車屋儀三郎事件」。年の離れた人力車夫(藤竜也)と関係を持った人妻が、邪魔になった夫(田村高廣)を共謀して殺害する。78年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞。

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