市川猿翁さん死去 83歳 香川照之の父「スーパー歌舞伎」創設者

[ 2023年9月16日 05:00 ]

市川猿翁さん(13年撮影)
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 古典舞台にスペクタクル要素を取り入れた「スーパー歌舞伎」創設者の歌舞伎俳優、市川猿翁(いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦=きのし・まさひこ)さんが13日午前6時55分、不整脈のため東京都内で死去した。83歳。東京都出身。葬儀・告別式は親族で執り行う。市川中車を名乗る香川照之(57)の父で、自殺ほう助の罪で起訴された市川猿之助被告(47)の伯父。人気俳優として当代一の集客を誇ったが、2003年に脳梗塞で倒れて以後は一線を退いていた。

 猿翁さんは1947年に三代目市川團子を名乗り初舞台を踏んだ。63年に襲名した三代目市川猿之助として長く活躍した。68年の「義経千本桜 川連法眼館」で狐忠信の宙乗りに挑み、大きな話題を呼んだ。以後、宙乗りを数々の作品に取り入れ、5000回を超える偉業はギネスブックにも登録されている。「スピード」「ストーリー」「スペクタクル」の“3S”を重視して、現代に生きる歌舞伎を探求する姿勢は、86年にスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」に結実し一世を風靡(ふうび)した。

 2003年に脳梗塞と診断され、思うように体を動かせなくなり療養生活に入った。だが、その後も舞台への情熱を持ち続けた。12年に二代目猿翁を襲名して一時、舞台復帰を果たした。同年には40年間絶縁状態だった長男の中車の襲名会見に登場。脳梗塞を発症以降初めて記者会見の席に姿を現した。後遺症で思うように動かない体を香川が手を伸ばして支えた。

 女優の浜木綿子(87)と65年に結婚。香川が誕生したが、1年ちょっとで別居生活に入り、68年に離婚。息子の香川は浜が引き取った。夫婦仲に溝ができた原因は日本舞踊藤間流名取(のちに紫派藤間流を創始して家元)で、16歳年上の女優藤間紫さんとのW不倫だった。

 香川は89年に俳優デビュー。25歳になって猿翁さんの公演先に会いに行ったが、猿翁さんは「私は家庭と決別した瞬間から蘇生したのです。だから今の僕とあなたとは何の関わりもない。あなたは息子ではありません。今後二度と会うことはありません」と突き放したという。

 中車の襲名会見では、40年以上断絶していたとは思えない親子の姿を見せた。猿翁さんは「浜さん、ありがとう。恩讐(おんしゅう)のかなたにありがとう」と浜に感謝の言葉を述べた。
 晩年は香川一家の近所で暮らしていた。


 市川 猿翁(いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦=きのし・まさひこ)1939年(昭14)12月9日生まれ、東京都出身。三代目市川段四郎の長男。47年に初舞台を踏み、三代目市川團子を襲名。63年に三代目市川猿之助を襲名。12年に二代目猿翁を襲名した。68年から宙乗りを始め、5000回を超えた宙乗りはギネスブックにも登録されている。86年には「スーパー歌舞伎」も創設し、歌舞伎の新たな道を切り開いた。00年に紫綬褒章受章。10年文化功労者。屋号は澤瀉屋。

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