羽生九段、次戦向け「集中」 7年ぶり“勝者の記念撮影”でリラックス たこ焼き写真もSNSで大人気

[ 2023年1月24日 05:00 ]

ハニワの面を着けた人を乗せたバスに乗り、ポーズをとる羽生九段(撮影・河野 光希)
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 第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第2局で、藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が勝利し一夜明けた23日、羽生は対局した大阪府高槻市内で恒例の「勝者の記念写真」の撮影に臨んだ。1勝1敗となり、次戦に向け「集中してやっていくだけ」と静かに闘志を燃やした。両雄がっぷり四つの展開にこの日もファンの興奮は収まらなかった。

 帽子をずらしてかぶり、運転手の制服に身を包んだ羽生が、穏やかな表情で「発車しま~す」と前方に右人さし指を突き出した。対局中とは対照的に、リラックスした雰囲気。王将戦恒例の一夜明けの「勝者の記念写真」に臨むのは、16年2月に栃木県大田原市で屋台を前に法被姿で撮影して以来7年ぶり。久しぶりの感触を楽しむように撮影に応じた。

 羽生が扮装したのは、高槻市に来年完成予定の新・関西将棋会館にちなみ、昨年から投入された市営バス「高槻将棋ライナー」の運転手。そんな街で、いまや5冠を持つ藤井王将からもぎとった勝利に、周囲も一気に盛り上がってきた。

 将棋好きの間では有名な存在で、本人とも面識のあるファン歴40年以上の埼玉県在住の小佐野裕さん(75)はこの日、取材に「終盤は最善の受けを続けないと逆転される。気が気ではなく心臓に悪かったですが、その分の勝利は最高のプレゼントでした」と大喜び。私設応援サイト「玲瓏(れいろう)」の管理人、たいがー氏も興奮冷めやらず「第3局も最強藤井先生が首をひねるような、羽生さんの大局観を期待します」と力を込めた。

 相対する藤井のファンも、羽生の根強い人気ぶりを肌で感じている。東京都の新井雅恵さん(54)は「大盤解説会場で初めてアウェーを感じた」と振り返った。藤井と同い年くらいの子供を持つ母親世代が多く応援していることから、一部の間で「藤井マダム」と呼ばれる中年の女性ファン。近年の活躍から解説会場での一大勢力だったが、第2局の解説会場を訪れた北海道在住の五十嵐真理子さん(49)は「(藤井ファンは)いつも8割ですが、今回は2割。男性も多かった」と実感した。

 その人気を裏付けるようにこの日、羽生の関連ワードがツイッターのトレンド入りを果たした。たこ焼き店の店主に扮した羽生を伝えた本紙報道を受け、午前中には「たこ焼き屋の店主姿」が上位にランクインした。

 両雄がっぷり四つとなった王将戦は、28、29日に石川県金沢市「金沢東急ホテル」で第3局が開催される。羽生は「後手番なので、またちょっとそれに伴った作戦を考えなくてはいけないと思ってます」と意気込んだ。対局当日の予報は雪。それをも溶かす熱い戦いが再び幕を開ける。 (小田切 葉月)

 ≪バス運転手に変身≫勝者の記念写真で、公式制服とネクタイを身につけ制帽をかぶった羽生は本物の運転席に座り「子供の頃はバスによく乗っていたので身近な存在ですね。運転手になろうとは思わなかったですけど」と苦笑いするも、うれしそうな様子だった。

 高槻市は「古墳の街」として知られることから、ハニワの面を着けた“乗客”を乗せ出発進行のポーズ。車体側面に自身や藤井、谷川浩司17世名人(60)らトップ棋士の対局姿がプリントされたラッピングバスで「2台ほどしかないと聞いていたので、こんな形で見られるとは。市に住んでいる方でもなかなか見る機会はないと思います」と、勝者の役得にご満悦だった。

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