上谷沙弥 選んだ道の正しさと未来の明るさ 「世界でも戦ってみたい」

[ 2022年7月28日 08:00 ]

白いベルト防衛8回を達成した上谷沙弥(C)STARDOM
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】それはプロレスラー・上谷沙弥(25)にとって世界に向けての第一歩かもしれない。今月30日に東京・大田区総合体育館で行われるタッグマッチ。レディ・Cと組み、高橋奈七永、KAIRI組と戦う。

 KAIRIは2017年から20年まで米・WWEで活躍。NXT女子王座、WWE女子タッグ王座に就いた経験がある。

 上谷とKAIRIが初めてリング上で相対したのは、6月11日のエディオンアリーナ大阪。上谷の試合後に姿を見せたKAIRIはマイクを握り、上谷が持つワンダー・オブ・スターダム王座(白いベルト)に「ちょっと興味がわいてきた」と語り、まずはタッグマッチでの対戦を持ちかけた。

 上谷は振り返る。

 「存在感の大きさ、世界で活躍したスターのオーラを感じました。選手としては全力ファイトで熱い試合をするイメージがあります」

 上谷は昨年12月に白いベルトを獲得し、現在まで8回連続防衛中。KAIRIが16年から17年にかけて樹立した記録に並んでおり、最多(渡辺桃の13回)超えを目指す最中だ。

 「まずは30日のタッグマッチです。奈七永さんはレジェンドで、KAIRIさんはスーパースター。実力を考えると、本当に手ごわい相手です。でも、私はその先に、大きな野望を抱いているので、それをかなえるためにも勝ちたい。私のプロレスを認めてもらいたいです」

 チャンピオンは自分自身だが、世界基準ではKAIRIの方が上。6月11日の2人のマイクパフォーマンスでも上谷が「白いベルトをかけて戦ってくれますよね?お願いします」と逆にKAIRIに挑戦表明したほどで、タッグマッチで勝利してこそシングルマッチが現実味を帯びてくる。そして、その先に、KAIRIが体験した世界が広がる。

 「世界でも戦ってみたいという気持ちはあります。私は小さい頃からダンスをやっていて、中学1年生の時、世界大会に行って、2位になったことがあるんです。会場がラスベガスだったんですけど、その時に浴びた歓声を今でも覚えていて、あんな歓声をプロレスラーとして浴びてみたい。派手な技が自分の武器なので、今のスタイルのまま試合をして海外のお客さんがどれくらい反応してくれるのか試してみたいです」

 関係者によれば、上谷が所属する「STARDOM(スターダム)」は海外での大会開催も視野に入れているといい、開催が実現すればそこでの活躍が期待される。

 プロレスラーとしてデビューしたのが2019年。それまで志していたアイドルの道から離れて3年の時が流れた。

 「あの時はアイドルかプロレスかの二者択一でした。今でも、プロレスに出会わなかったら私はどうなっていたんだろう…と思うことはあります。でも、未練はありません。プロレスラーになって東京ドームでの試合も経験させて頂きました。あのままアイドルを目指していたら東京ドームに立つことなんてできなかったです。シングルのベルトをとって8回防衛していることを誇りに思っていますし、この道を選んで良かったと心から思っています」

 約1年半前、無冠だった上谷に「進んだ道に間違いはない?」と尋ねたことがある。その時の答えは「そう信じたい」。まだ確信を持てていない様子だった。しかし、その後、シンデレラトーナメントで優勝し、白いベルトを獲得。信じて歩み続けた先に、選んだ道の正しさの証明があり、そこから広がる未来の明るさがあった。

 「まだ不器用な部分もあります。みなさんをもっと楽しませるプロレス、もっと感動させるプロレスができるように全力で頑張りますので、これからも応援をよろしくお願いします」

 目指すべき場所はさらに上にある。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2022年7月28日のニュース