「鎌倉殿の13人」初回の頼朝女装は義高から逆算?神がかる三谷脚本 ネット絶賛続々「天才すぎ」

[ 2022年5月8日 08:02 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第17話。女人に化け、御所からの脱出を図る源義高(市川染五郎)と手助けする八重(新垣結衣)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は1日、第17話が放送され、木曽義仲(青木崇高)の息子・源義高(市川染五郎)が女人に化け、御所からの脱出を試みた。初回(1月9日)、女装した源頼朝(大泉洋)の逃走劇が重なる展開。脚本・三谷幸喜氏(60)の筆が神がかっている。

 <※以下、ネタバレ有>

 ヒットメーカーの三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第17話は「助命と宿命」。義高は父・木曽義仲(青木崇高)の文を読み、翻意。生き延びることを決意した。義時(小栗)ら一丸となった義高脱出作戦が始まる。

 義時「冠者殿には女人に化けて御所を抜け出してもらいます」

 実衣(宮澤エマ)「前にも同じ手を使わなかった?」

 政子(小池栄子)「鎌倉殿を北条館から逃した時よ。私の考え」

 御所の東、名越の先にある寺に1泊。翌朝、三浦から船で伊豆山権現へ向かう手はずとなった。

 阿野全成(新納慎也)が頼朝に変装し、義高の見張り4人に「ご苦労である。あの~、義高と2人で話したい。しばらく外せ。呼ぶまで戻ってくるな」。義高は女物の着物に着替える。父・武田信義(八嶋智人)と頼朝討ちを義高に持ち掛けていた一条忠頼(前原滉)が幽閉部屋に入ると、義高の従者・海野幸氏(加部亜門)が義高と入れ替わっていた。

 義高は八重(新垣結衣)や子どもたちに紛れて御所を抜け出し、名越の先にある寺に到着。脱出は成功した…かに見えた。

 忠頼の報告を受けた大江広元(栗原英雄)は、頼朝に義高が逃げたと伝える。頼朝は「見つけ次第、首をはねよ」。義時は義盛と畠山重忠(中川大志)に相談。義盛と重忠は西の山中を捜索するよう御家人に命じ、翌朝までの時間を稼ぐ。

 しかし、三浦義村(山本耕史)が寺に着くと、義高の姿がない。義時宛の手紙。「小四郎殿、私はやはり、あなたを信じることができません。御台所から遠ざけた上で、私を殺す気ではないのですか。鎌倉は恐ろしいところです。私は故郷の信濃で生きることにします」。西には追っ手がひしめく。

 西の山中。逃げる義高の前に、名を上げようと息巻く伊豆の武士・藤内光澄(長尾卓磨)。大姫と一緒に遊んだ手鞠の紐が引っかかったのか、義高は刀が抜けない――。

 御所。大姫(落井実結子)が頼朝に決死の助命嘆願。「冠者殿をお助けくださいませ。冠者殿がいなくなったら、私も死にます」。小刀を取り出し、自分の喉元に突きつけた。頼朝は「わしの負けじゃ。捕まえても殺さぬよう、皆に伝えよ。父が悪かった」。義時が「殺さずに連れ戻すように」と指示していると、駆けつけた安達盛長(野添義弘)が首を振る。光澄が首桶を抱え、意気揚々と帰ってきた。一歩遅かった。

 「出家はしてもらうぞ」。義高の命は取らないと頼朝が一筆書き終えたところに、光澄が首桶を運んでくる。「謀反人、源義高、この藤内光澄が討ち取りました」。頼朝は「これは天命ぞ」、政子は「断じて許しません」。政子は場を去り、頼朝は上総広常(佐藤浩市)の祈願書と同じように、起請文を握りつぶした。

 番組公式ツイッターによると、史書「吾妻鏡」には「元暦元年(1184)4月21日条 源頼朝が自身を誅殺するつもりだと知った源義高は計略を巡らし、この日の暁に鎌倉を脱出しました。その時、義高は女房の姿になりすましていたようです」とあるという。

 初回、視聴者の爆笑を誘った頼朝の“女装脱出劇”は義高の“史実”からの逆算だったのか。SNS上には「2人の女装の差w」「頼朝の女装は爆笑したけど、義高はさすが美しくて悲しみしかなかったわ」「まさか第1回の女装がここの伏線か」「初回時の女装ネタが木曽義高逃亡の逸話の伏線にしてたとか、脚本天才すぎでしょw」「ただただ悲壮なドラマが紡がれるのかと思いきや、ユーモアも織り交ぜつつ、悪意でなく善意ですら人の命を奪うという怖さが際立った感。女装での逃亡を実衣の台詞で茶々入れしてたけど、この源義高の出来事ありきで逆算して第1話で源頼朝を女装させたのなら三谷脚本の構成は絶妙」などの声が続出。

 第17話全体としても「義仲討死後に義高も斬られた、義高とほぼ同時期に一条忠頼も暗殺された、義高を討ち取った藤内光澄も理不尽に処刑された。同時期に連鎖した出来事を一つなぎの悲劇としてまとめ、その発端を『頼朝を出し抜くほど知略に長けた武田信義』に求めるという発想、神としか言えない」「今週の脚本も凄かった。重なり合った父子の敵討ちのテーマ。頼朝と義朝、義仲と義高、信義と一条忠頼、工藤祐経と曽我兄弟。よくもこれを1話の中に盛り込んで分かりやすく描いたものだなぁ」「史実の時点で既に地獄のごった煮なのに、三谷脚本が更に悲劇のスパイスをモリモリ振りかけてくるから、地獄の激辛カレーになっている。美味しいけど、つらくて泣いちゃう」などと三谷脚本への絶賛の声が相次ぐ。

 第9話(3月6日)、孤独を痛感していた頼朝が弟・義経(菅田将暉)と劇的な対面を果たし「よう来てくれた!」と抱き締め、号泣。これは第4話(1月30日)、頼朝の挙兵に土肥実平(阿南健治)岡崎義実(たかお鷹)佐々木秀義(康すおん)が集結した際、頼朝が3人それぞれに対し「よう来てくれた」と二枚舌を使ったのが伏線。義経への「よう来てくれた!」は偽りなく、まさにドラマチックな展開となった。

 視聴者の涙を誘った“坂東の巨頭”上総広常(佐藤浩市)の「祈願書」にも伏線があった。

 第15話(4月17日)、粛清された広常の館にあった鎧の中のから封書が見つかる。頼朝は「子どもの字か。読めん」。義時は広常が読み書きの稽古に励んでいたと告げ、代わりに読み上げた。「これから3年のうちにやるべきこと。明神様のための田んぼをつくる。社もつくる。流鏑馬を幾度もやる。これすべて…鎌倉殿の大願成就と、東国の太平のため」――。頼朝はハッと何かに気づいたような表情。義時から渡された文に再度、目を通したが、丸めた。立ち上がり「あれは謀反人じゃ」と、その場を後にした。

 三谷氏は第12話(3月27日)、広常の「手習いシーン」を創出していた。政子に館を壊される「後妻(うわなり)打ち」に遭った頼朝の愛妾・亀(江口のりこ)を匿う広常は「いつまで預かってりゃいいんだよ。俺に色目使ってきやがった。ああいう女は好かねぇ」と義時にボヤき。そして、散乱した字の書き損じを義時に見られ「若い頃から戦ばかりでな。まともに文筆は学ばなかった。京へ行って、公家どもに馬鹿にされたくねぇだろ。だから、今のうちに稽古してんだよ。人に言ったら殺す」と打ち明けた。

 広常の未来への思いが知れた分、悲しみが深く刻まれた。佐藤は「最初に、本筋とは何か全然関係のないところで、広常のキャラクターが見えるようなシーンがあったらいいね、なんてことを演出陣と話していました。それを三谷幸喜さんが聞いて、できたシーンだったんです。どこか粗野な上総介が、全く童心のように、未来に対する希望として、それを書いている姿、やっている姿、そういう希望を無残に壊されてしまう悲しさがあると思います」(かまコメ=撮影直前・直後の音声コメント)と明かしている。

 冴え渡り「神回」が続く三谷脚本。今後も「あの時のシーンや台詞が、ここにつながったのか」と驚かされるに違いない。

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