六角精児 思い出の地で育ったセンバツ21世紀枠・只見ナインにエール「思いっきりやってくれ」

[ 2022年3月21日 05:30 ]

只見の選手たちにエールを送る六角精児(撮影・小海途 良幹)
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 「君たちは凄いぞ!思いっきりやってくれ!」。第94回選抜高校野球大会で22日に大垣日大(岐阜)との1回戦を控える初出場の只見(福島、21世紀枠)に、俳優の六角精児(59)が熱いエールを送った。六角は鉄道愛好家で、特に同校のある福島県只見町を走るJR只見線の大ファン。日本有数の豪雪地帯から、夢の舞台へたどり着いたナインの活躍を楽しみにしている。

 18人の登録枠に満たない選手13人で戦う只見。六角は「とにかく思いっきりやってほしいね。どんな結果になろうと、甲子園のグラウンドを踏んだ記憶を自分の中に十分に残して帰ってほしい」とエール。「只見線を使ってきたであろう高校生たちが甲子園に出るわけじゃないですか。それは、鉄道への勇気付けにもなると思うんですよ」と熱く語った。

 六角が愛するJR只見線は、福島県会津若松市と新潟県魚沼市の135・2キロを結ぶローカル線。ディープな秘境路線で、魅力は「四季折々の日本の原風景を見ることができること」。“乗り鉄”の六角が出合ったのは20年ほど前だ。会津若松での舞台公演の休演日に乗ってみると、車窓から見える景色をすぐに気に入った。度々訪れては、鉄道の旅を楽しんでいる。

 「いつ乗っても違う景色。いろんなものが詰まった、車窓の幕の内弁当のようなんですよ。夏は里山や川、朝の霧も見えて心地よい。秋の紅葉も奇麗だし、春の風も気持ちいい。そして冬は雪の厳しさが本当に分かる。落差が激しいんです」

 只見地方は日本有数の豪雪地帯。毎年2~3メートルの雪が降る。「外に出ると、すぐ真っ白になるよ。野球をするのはやっぱり厳しい」。只見の野球部は例年11月から4月までグラウンドが使えない。ハンデを背負う中で、雪の中を走って足腰を鍛え、屋根のある駐輪場で打撃練習をするなど工夫を重ねてきた。

 「実戦とはほど遠いことをしているし、他校と練習量で肩を並べることはできないでしょう。それでも秋の県大会でベスト8。21世紀枠だとしても、甲子園に出場するご縁があるってことが凄いよ。それだけで素晴らしいこと。出るべくして出る常連校が多い中で、そうじゃない選手たちの姿が見られるのは甲子園の良さだと思う」

 只見線は11年7月の新潟・福島豪雨により甚大な被害を受け、現在も会津川口―只見間が運休中。六角は17年、「只見線のうた」を作り、自身が率いる「六角精児バンド」で現地に歌いに行くなどして応援を続けてきた。一時は存続も危ぶまれたが、今秋に全線復旧する予定だ。「只見が甲子園に出る年に全線復旧ですよ。この偶然を偶然とは思いたくないですね」と運命のように感じている。

 3月下旬の今も、只見地方は雪が降る。「まだふきのとうも出てないかもしれないよ。彼らの甲子園での活躍は、一足早く春を告げてくれると思う。悔いなく戦ってほしいね」。13人の全力プレーを目に焼き付ける。

 ◇六角 精児(ろっかく・せいじ)1962年(昭37)6月24日生まれ、兵庫県出身の59歳。学習院大中退。82年に旗揚げされた劇団「善人会議」(現・扉座)の創立メンバー。舞台で活躍するほか、09年公開の「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」で映画初主演。出演作にドラマ「おちょやん」「DCU」、映画「すばらしき世界」「ハケンアニメ」(5月20日公開)など。4月20日にアルバム「人は人を救えない」を発売。

 ≪東日本ローカル1位≫只見線は雑誌「旅と鉄道」(16年5月号)の「好きなJRローカル線ランキング・東日本編」で1位に選ばれるなど、愛好家人気が高い。11年の豪雨被害前まで、会津若松―小出間の列車は1日3往復。赤字路線だが、雪国の住民には貴重なライフラインだ。六角は「全線復旧後にどれだけ乗ってもらえるかが課題。沿線は温泉も酒蔵もあるし、夏にはクワガタやカブトムシがたくさん捕れる。イベント列車を走らせたりして、いろんな相乗効果があるといいなと思う」と話している。

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