渡辺王将、3連覇!谷川九段に並んだタイトル通算27期 第70期王将戦7番勝負第6局

[ 2021年3月15日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第6局第2日 ( 2021年3月14日    島根県大田市・さんべ荘 )

王将戦3連覇!!島根県大田市の伝統芸能・石見神楽の衣装を着て「大蛇」を退治する渡辺王将(撮影・中村 達也)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=に永瀬拓矢王座(28)が挑む第6局は14日、第2日が指し継がれ、渡辺が113手で勝利し、4勝2敗でシリーズも制覇し、3連覇した。終局は午後7時25分。第1日に千日手となり、先手になった指し直し局では終始主導権を握って永瀬の粘りを寄せ付けず、通算5期目の獲得。タイトルも通算27期とし、歴代4位・谷川浩司九段(58)に並んだ。

 飛車を成り、控室に渡辺優勢の声が出始めた午後4時、永瀬最後の反撃が始まった。

 78手目△1二飛の飛車捨て。▲2四竜に△2三歩、▲3五竜には△3四銀。この捨て駒3連発は、取ればいずれも△6七角の王手竜が生じる。毒まんじゅうに手を出さず▲2六竜と自陣待避したのが冷静な応接。87手目▲3五歩が決め手になった。

 指し直し局は敗れた第5局を踏襲する角換わり。「同じになって“ちょっと…”と思ったがプランが他になかった」。開幕3連勝の後、連敗する悪い流れ。そこで「3勝0敗だったことは忘れた」。最年長タイトルホルダーの経験値を生かし、「最新型の将棋になることが多く、準備段階から大変だったが内容の濃い将棋が指せた」と満足感に浸った。

 さんべ荘での対局は7年ぶり。対局室には第63期第6局の相手・羽生善治九段(50)との墨書「勇躍」がある。前日取材では当時を回想し「2日目午後4時前に投了したので、夜の飲み会がひたすら長かった。今回はそうならないように」と笑った。昨年念願だった名人を獲得。第一人者の足場を固め、手応えを勝ち得た証か、自虐的発言で周囲を和ませる。

 「将棋に精神論はない」「ロマン的な理由で戦型は選ばない。勝率の高そうなものを採用する」。若き日に語った合理的スタンスは不変だが、もう強い言葉で存在感を誇示する必要はない。

 少年時代、憧れたのが谷川将棋の代名詞「光速の寄せ」。その27期に36歳で並んだ。「シリーズ前から目標にした。並べて大変うれしい」。立会人の福崎文吾九段(61)は谷川との共通点を、羽生世代と違って同世代の好敵手不在と指摘し、「マラソンでも横を走るランナーがいなければ好記録は出ない」。孤独を克服しての偉業を称え「柔道なら常に一本勝ちを狙う」と渡辺将棋の魅力を形容した。

 17日に9連覇へ王手をかける棋王戦第4局、4月7日からは名人戦。トリプル防衛戦の初戦を押さえ「いずれも若い挑戦者。大変ですが、それをやりがいにやりたい」。2004年、竜王に就いて以来無冠期間がない3冠は、休む暇もなく戦場を求めて走りだす。(筒崎 嘉一)

 ▼谷川浩司九段 渡辺さんはタイトル戦が非常に強い。番勝負にしっかり戦略を立てて臨んでくることが勝率(27勝10敗の.730)の高さにつながっている。ここ2年くらいの充実ぶりを見ていたら、(タイトル獲得数を)並ばれて抜かれるのも時間の問題だと思っていた。

 ◆渡辺 明(わたなべ・あきら)1984年(昭59)4月23日生まれ、東京都出身の36歳。2000年に四段昇段を果たし、史上4人目の中学生棋士に。04年に初タイトルとなる竜王を獲得以降、王将戦5期を含む27期の戴冠を誇る。昨年は名人戦初挑戦で初奪取。王将、名人、棋王の3冠を保持。

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