朝ドラ「おちょやん」 杉咲花と成田凌の塩対応と神対応

[ 2021年1月28日 09:30 ]

NHK連続テレビ小説「おちょやん」で千代(杉咲花)と一平(成田凌)が話す場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】塩対応の妙味を感じた。28日放送のNHK連続テレビ小説「おちょやん」で、主人公の千代(杉咲花)が、あきらめかけた女優の道を再び歩み始める契機となる場面だ。

 千代が胸に退職届を忍ばせて撮影所の廊下を歩いていると、旧知の喜劇役者・一平(成田凌)に出くわす。父親のテルヲ(トータス松本)にまつわる悩みで「あんたにウチの何が分かんねん」と怒りをあらわすと、一平から返ってきたのは、なぐさめではなく、「分かるはずないやろ。人の苦しみがそない簡単に分かってたまるか」という冷たい答え。千代は目に涙をにじませ、絶句する。

 小気味良いほどの一平の塩対応。本来ならば意気消沈するところだが、千代の心はそこから前向きに動く。一平から「おれの苦しみはおまえなんかには絶対に分からへん。そやから、おれは芝居する。芝居すると、そういうものがちょっとは分かる気がする。分かってもらえる気がする」と言われ、かつての自分の舞台や演技のことを走馬灯のように思い出す。そこにあるのは、芝居をやり遂げた時の充足感。無言のままの千代の表情に、気持ちの変化が表れる。

 「芝居をすることで分かってもらえる気がする」。千代を演じる杉咲はインタビューで「私はそのセリフがすごく好きで、私自身にとても響きましたし、本当にそうだなと感じました」と打ち明けている。あの場面の表情は、演技を超えた、心の奥底からの表現だった。

 あの場面で2人は塩対応に終始したが、物語を離れると、関係性の良好さがうかがえる。杉咲と成田は過去に、昨年公開の映画「弥生、3月─君を愛した30年─」やCMなどで共演。杉咲は「これまでご一緒させていただいたこともあって、同志という感じがします。撮影に全く関係ないことも、何でも話せて、成田さんが現場にいてくださると安心感があります」と明かす。

 一方の成田も今作の撮影に関して「杉咲さんが素晴らしい。誰が見ても文句のつけようがないんじゃないでしょうか」と絶賛。視聴者へのメッセージを問われても「何よりも、ただただ『杉咲花が素晴らしい!』。そういうことだと思います。彼女が生き生きとそこに存在していれば、それで十分かなと。きっと、みんなに愛してもらえると思います」と語る。

 物語での塩対応ぶりとは相反する神対応ぶり。今後、ドラマの中で2人の関係がどのように発展していくのか注目される。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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