中村獅童 役のためならという「覚悟」 「作品ごとに変貌するのは願ったりかなったり」

[ 2025年11月16日 05:00 ]

カメラを見つめる中村獅童(撮影・河野 光希)
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 【俺の顔】歌舞伎の立役、映像作品では寡黙な鎌倉武士、果ては異形の死に神まで。歌舞伎俳優の中村獅童(53)はこれまで実に幅広い役を演じてきた。「顔には生きざまが表れる」。変幻自在な役になり切る男の原点とは。(前田 拓磨)

 何かを射抜くような鋭い眼光。「顔には生きざまが表れる怖さがある」と言った。生きざまとは何か。「覚悟を持つこと」

 血縁が大きな意味を持つ歌舞伎界で、父の小川三喜雄さんは若い頃に廃業。後ろ盾もなく、「歌舞伎座で主役を張るのは難しい」とまで言われ、いばらの道を歩んできた。「親なしでやっていく上で自分で自分の名前を大きくする」と外の世界に活路を求めた。

 転機は02年。宮藤官九郎氏が脚本を担当した映画「ピンポン」。眉毛はなく、頭をそり上げた姿が衝撃を与えた。さらに三谷幸喜氏が脚本・総合演出を務めたフジテレビのコメディードラマ「HR」。本番前日に台本が渡され、ほぼ30分一発撮りの過酷な現場を経験し「三谷さんのコメディーの間合いを勉強させてもらった」。以降も三谷作品に呼ばれ、今月歌舞伎座で上演中の三谷氏の新作歌舞伎「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな」では飲んだくれの看板役者を演じる。「道化だけでなくシリアスな役もキャスティングしてくださる。いろいろな面を捉えてくださっている」と感謝する。

 「作品ごとに変貌するのは願ったりかなったり。別に眉毛をそり落とそうが髪の毛をそり落とそうが、役のためならという考え方は今も変わらない」。その「覚悟」が、「魚屋宗五郎」など王道の歌舞伎から「デスノート」の死に神・リュークの声まで、幅広い演技と人気につながっている。尊敬する叔父の萬屋錦之介さんと中村勘三郎さんから授かった言葉「顔で芝居をするのではなく、心で演じる」が原点だ。「その役、人生の歩み方、思想、そういったものが全て芝居につながり、表情につながり、顔につながる」。母・陽子さんの「特段、美形でもないから顔に頼らずに演技を磨きなさい」という激励も、「若い頃から言われて染みこんでいる。意識しなくても、そういう思想になっている」。

 昨年6月には息子の陽喜(7)、夏幹(5)と歌舞伎座で初舞台。「いまいち父親としてどういうふうにしてあげたいかが分からない」と戸惑いながら、楽屋に並ぶ鏡台に「家族」を実感。「夏幹は大人顔負けにとんぼを返すことができるようになった」と目尻を下げた。

 一方で初音ミクと異色のコラボ「超歌舞伎」や絵本原作の「あらしのよるに」など「獅童ならではのものは引き継いでくれればうれしいけど、そこに至らない役者だったら他の人がやった方がいい」ときっぱり。「僕の息子だからといって当たり前にやるのはちょっと避けたい」。その目は、冷静に現実を見つめている。

 ≪2つの大役へ気合≫ 獅童は「十二月大歌舞伎」で(12月4~26日、東京・歌舞伎座)で2つの大役を担う。一部では10年目の節目を迎えた「超歌舞伎 Powered by IOWN『世界花結詞(せかいのはなむすぶことのは)』」が上演される。陽喜と夏幹も出演する。「超歌舞伎はいろいろな愛のこもった作品」と熱弁。その言葉通り、オープニングの映像には獅童の亡き母が赤ん坊の(長男)陽喜を抱っこする映像が一瞬映るという。「陽喜が誕生した時には、もう母は亡くなっていたので、孫を抱くことができなかったのですが、うれしいですよね。心が通うというか、超歌舞伎に母も出演しているんだと感じる」としみじみと語った。

 二部では2年ぶりに歌舞伎座の舞台で寺島しのぶ(52)と共演する。世話物の名作「芝浜革財布」で魚屋政五郎を演じる。「(江戸の)匂いというものが出てくるには何度かやらないととは思う。初役は初役ならではの新鮮さが大事。大切に演じたい」と意気込んだ。

 ◇中村 獅童(なかむら・しどう)1972年(昭47)9月14日生まれ、東京都出身の53歳。祖父は昭和の名女形とうたわれた三代目中村時蔵。81年6月、歌舞伎座「妹背山婦女庭訓」で二代目中村獅童を名乗り初舞台。2003年「ピンポン」で日本アカデミー賞新人賞。尊敬する俳優の一人は映画「竜二」の脚本・主演を務めた金子正次さん。

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