柴咲コウ 「エール」で分かる恋愛ドラマの面白さ

[ 2020年6月18日 12:30 ]

NHK連続テレビ小説「エール」で双浦環の若い頃を演じる柴咲コウ(右)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】柴咲コウの恋愛ドラマを久しぶりに見た。いつ以来だろう。あまり記憶がない。聴覚障害のある女子大生を演じた「オレンジデイズ」(2004年)以来だろうか。

 柴咲がオペラ歌手の双浦環役で出演中のNHK連続テレビ小説「エール」。今週は主人公夫妻(窪田正孝、二階堂ふみ)を取り巻く登場人物に焦点を当てたスピンオフ作品を放送しており、18日は「環のパリ物語 前編」だった。

 双浦環が駆け出しだった頃の物語。スカラ座やオペラ座の舞台に立つことを夢見てパリに留学した環がホームパーティーに足を運ぶと、画家を目指す男性(金子ノブアキ)と出会い、恋に落ちる。

 環がまだ若い頃の話だから、柴咲はそれに合わせた演技をしている。顔つきはおどおどしているし、声の調子は高い。恋人と一緒に住み始め、ベッドの上でいちゃつく場面はキャピキャピしている。相手の男性を見つめる目に、愛があり、心配があり、優しさがある。こんな表情は恋愛ドラマでなければ見られない。後編でどんな結末を迎えるのだろう。

 最近の柴咲は大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年)のイメージが強い。あの作品にも女心、恋心を描いた場面があったかもしれないが、今でも鮮明に頭に浮かぶのは、直虎が城主になる前、政略結婚を拒んで出家して尼になった姿だ。

 当時、柴咲をインタビューした際に「尼さんの姿が初めてという感じが全くしない。とても落ちつく」と語っていたのを思い出す。結婚しない直虎について「中ぶらりんのような状態の中で、それを生かして生きていく女性。私が今後、どう生きていくか分からないけれど、参考にしてしまうところがあるかもしれない。直虎はいつまでも『少女性』を失わないような人で、私自身もそういうのを目指している」とも話していた。

 最近の柴咲を見ていると、その言葉通りの生き方をしているように思える。YouTubeの公式チャンネルで私生活の一端を明かしているが、作る料理がギョーザやキムチだったり、毎朝、瞑想していることなど、独特の個性がうかがえる。

 しかし、そんなギャップがあるからこそ、恋愛ドラマが面白い。実年齢に近い役で、誰かと深い恋愛をし、さまざまな表情を見せる作品を、どこかのテレビ局が作らないものだろうか。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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