「エール」再婚OK岩城役・吉原光夫が再び存在感!11年「レ・ミゼラブル」が転機「僕を救ってくれた」

[ 2020年6月16日 08:15 ]

連続テレビ小説「エール」第57話で再び存在感を示した吉原光夫(C)NHK
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 俳優の窪田正孝(31)が主演を務めるNHK連続テレビ小説「エール」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は16日、第57話が放送され、ミュージカル俳優の吉原光夫(41)が第24話(4月30日)以来の1カ月半ぶりに登場。吉原演じる馬具職人がヒロイン(二階堂ふみ)の母(薬師丸ひろ子)との再婚を許され、再び注目を集めた。今回、朝ドラはもちろん、テレビドラマ初出演。劇団四季出身の実力派だが、東日本大震災が発生した2011年、主人公ジャン・バルジャンを演じたミュージカル「レ・ミゼラブル」が大きな転機となった。

 朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶりとなる。モデルは全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909~1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・関内音(二階堂)の夫婦愛を描く。

 吉原は1999年、劇団四季附属研究所に入所。数々の舞台に出演し、07年、劇団四季を退団した。11年、32歳の時、帝国劇場開場100周年記念公演「レ・ミゼラブル」の主演(山口祐一郎、別所哲也とトリプルキャスト)に抜擢。日本公演の歴代最年少ジャン・バルジャン役を務めた。

 今回、吉原が演じるのは、関内家が営む馬具店の職人頭・岩城新平。音も恐れるほどの強面だが、職人としての腕は一流。出番は多くないものの、その無骨さを体現し、序盤から存在感を発揮している。

 第57話は「父、帰る 後編」。1泊2日、地上に帰る権利が得られる「あの世」の宝くじに当たった音(二階堂)の父・安隆(光石研)は10年ぶりに現世に戻る。東京の裕一&音の家に続き、2日目は豊橋の関内家へ。馬具職人・岩城(吉原)の変わらぬ仕事ぶりを目にし、感心。妻・光子(薬師丸ひろ子)と久々に再会し、小説家を夢見る三女・梅(森七菜)が壁にぶち当たっていることを知る…という展開。

 朝の食卓、光子が「岩城さんって、歌がうまいのよ。意外でしょ」と梅に語り、吉原がミュージカル俳優なのを用いた“裏設定”も。小さい頃の唯一の友達に新人賞をさらわれ、悔しがる梅に、安隆は「負けを認めるってことは大切なことだ」と説く。「お父さんはそういう経験ある?」と問われ、安隆は「岩城だ。アイツには勝てんから、父さんは職人を辞めて、経営に専念した。ずーっと、うちに仕事があるのはアイツのおかげだ」と打ち明けた。

 梅「岩城さん、お母さんのこと好きだよ。再婚するって言ったら、つらい?」

 安隆「お父さんはうれしい。2人とも大好きだから」

 そして、ラスト。安隆は「再婚を許す」と岩城に手紙を残した。安隆の姿は二親等までしか見えず、その気配を感じながら、岩城はこう書き加えた。「おれは安隆さんといるおかみさんが好きなんです」――。

 吉原は「職人として腕が一流という設定なので、凄くプレッシャーがありました」としながらも、北海道にある馬具工房へ足を運び、役作り。お世話になった工場の職人からは「普通に働けるよ」と革に穴を開け、糸を通すなどの技術を褒められたといい「死ぬほど練習をしたので、そこは自信があります。手にはマメがたくさんできましたけどね」と手応えを示した。

 薬師丸との共演は「僕が映画好きなので、ずっと見てきた方でもあったので、そういう方を目の前にして、一緒に目を合わせられるだけでも光栄です。もう十分、一緒に演じさせていただけただけで感激しています」と喜んだ。

 岩城というキャラクターについては「自分をトコトン突き詰めて、妥協を許さない。プライドを持って、この職業を背負っていた人だと思います。周りの人に厳しいのも、要は、この仕事を他人にナメられるなよ、という意味合いもあるのかなと。関内馬具店は軍に馬具を卸す仕事をしているので、量産しないといけない。下請けとして、かなりハードな仕事だったと思います。岩城としては、いい仕事をして、馬具職人という職業が世の中にもっと認められる仕事になるように、完璧な美しいものを作ろうとしている。光石研さん演じる安隆さんを超えようと思っていたわけじゃないけれど、馬具職人としてのプライドを保つために厳しい人間になったんだろうなと思います。裏を返せば、たぶん中身にあるものは温かくて、信じたものに真っすぐな人。関内家に対しても、忠実であり、愛情深い人間だと思います」と分析。しかし、第9話(4月9日)、安隆が亡くなり、岩城は仕事がなくなった関内家を後にしたが、その行動に内心、引っ掛かっていた。

 「実のところ、演じていた僕は納得いかなかったんです。岩城はどんな時でも関内家から出ていかない人なんじゃないかと思っていたので。幼少期の音(清水香帆)に『職人は仕事がなきゃ食ってかれん』というセリフを言うんですが、役を演じていくごとに、あの時の行動は関内家のためだったのかなと思えるようになりました。さらに一流になろうとして、外で職人としての腕を上げようとしたのではないかと思えて、ある時、フッと腹に落ちたんですよね。今みたいに作り手が大々的に知らされることって昔は少なかったと思うんです。誰が作ったかは重要視されていない時代で、自分の技術を人に評価されて、雇われることでしか生計を立てられない。それって、職人にとっては凄く寂しいことだったと思います。岩城の背中が少し寂しそうな感じがするのも、何となく、そういう背景があるからだと思います」

 11年の東日本大震災が「凄く大きな転機」に。劇団四季を退団し、大舞台の初仕事が主役に選ばれた「レ・ミゼラブル」だった。稽古中に震災が発生し、1~2週間ほど中断。「劇場の耐震構造の問題や余震が続く中で上演をして大丈夫なのだろうかという不安が襲いました。ですが、僕らのカンパニーの意向は被災者、被災地のために公演は絶対打つんだという気持ちに固まっていったんです。自分たちの思いを1つにして、結果『レ・ミゼラブル』に集中することができました。実は『レ・ミゼラブル』という作品は僕を救ってくれた作品です」。しみじみ振り返った。

 「今、このような日本の状態の中でも、舞台と違って、テレビはおそらく、できる限り放送されると思うんです。『エール』を見てくださった方が、少しでも元気になれたらと。裕一と音は、この時代の中で自分が好きだと思うことや、自分はこうしたいという気持ちに対して、真っすぐに生きた人たちです。この2人のように、シンプルに考えて、シンプルに自分の人生を生きることが、凄く大事なんじゃないかなと思います。きっと、そういう力強い、エネルギーのある作品になっているので、今は一部のピースとしてはめていただいたことに、本当に感謝しかないなと思っています」

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