大河「いだてん」子役に“素人”異例起用のワケ「何色にも染まっていない」井上剛氏が明かす演出術

[ 2019年1月13日 06:00 ]

大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」第2話の1場面。幼少期の四三(久野倫太郎)(C)NHK
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 歌舞伎俳優の中村勘九郎(37)と俳優の阿部サダヲ(48)がダブル主演するNHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(日曜後8・00)は13日、第2話「坊っちゃん」を放送。「日本のマラソンの父」と称される前半の主人公・金栗四三(かなくり・しそう)の幼少期が描かれる。全国約1500人をオーディションし、演技経験のない久野倫太郎くん(8)を発掘、異例の抜擢。2013年前期の連続テレビ小説「あまちゃん」に続き、脚本家の宮藤官九郎氏(48)と再タッグを組むチーフ演出の井上剛氏に起用理由や全体のプランなどを聞いた。

 大河ドラマ58作目。「あまちゃん」で社会現象を巻き起こした宮藤氏が大河脚本に初挑戦。オリジナル作品を手掛ける。20年の東京五輪を控え、テーマは「“東京”と“オリンピック”」。日本が五輪に初参加した1912年のストックホルム大会から64年の東京五輪まで、日本の激動の半世紀を描く。“近現代大河”は86年「いのち」以来33年ぶり。

 勘九郎は、ストックホルム大会に日本人として五輪に初参加した金栗四三、阿部は水泳の前畑秀子らを見いだした名伯楽で64年の東京大会招致の立役者となった新聞記者・田畑政治(まさじ)を演じる。主演リレーは00年「葵 徳川三代」以来19年ぶり。

 「昭和の大名人」と呼ばれる落語家・古今亭志ん生(1890〜1973)が物語をナビゲート。志ん生役にビートたけし(71)、若き日の志ん生・美濃部孝蔵役に俳優の森山未來(34)を起用。志ん生の視点が加わることにより、ドラマは重層的になる。

 井上氏は1993年入局。「64(ロクヨン)」「トットてれび」などを手掛け、阪神・淡路大震災15年特集ドラマ「その街のこども」(10年)はドラマとドキュメンタリーを融合した演出が注目された。大河ドラマは「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」(02年)以来2作目。

 今月6日に放送された第1話は「夜明け前」の副題通り、いわば“エピソード0”。1959年、五輪招致目前の東京で寄席を行う落語家の古今亭志ん生(ビートたけし)と、1909年、3年後のストックホルム大会参加に力を注ぐ柔道の創始者・嘉納治五郎(役所広司)を中心に、プロローグが描かれた。金栗四三が登場したのはドラマ開始54分後だった。

 そして「次回からが主人公のお話です」(第1話終了後の予告編)と迎える第2話。この日、テレビ寄席で落語家の古今亭志ん生(ビートたけし)が語るのは、日本初のオリンピック選手となった金栗四三(勘九郎)の知られざる少年時代。熊本に生まれた四三は学校まで往復12キロを走る「いだてん通学」で虚弱体質を克服した。軍人に憧れ、海軍兵学校を受験したが、不合格。身体を鍛えても無駄と落ち込む四三だが、幼なじみのスヤ(綾瀬はるか)に励まされ、嘉納治五郎(役所広司)が校長を務める東京高等師範学校への進学を決意。運命の出会いが近づく…という展開。

 幼少期の四三を演じたのは、地元・熊本の小学2年生、久野倫太郎くん(8)。約4カ月にわたって全国約1500人をオーディションし、決定。昨年4〜5月に行われた熊本ロケに約7日間、参加した(当時7歳)。

 井上氏は「主人公が独特の素朴さを持っているので、まだ何色にも染まっていない人を探していたら、やっと最後の最後に見つかりました。おばあちゃんがNHK熊本放送局に応募したそうです」。大河や朝ドラは主人公の幼少期を描く時、キャリア豊かな子役を起用することが多いが、今回は演技経験のない“素人”。「最初はどうしようかと思いました」と苦笑いしながらも「幸い、セリフもそれほどなかったので、何とか本人を誤魔化しながらですね。台本も見たことがないし、まだ漢字も読めないし、7歳の子供に『この人がお父さん』と言っても、なかなか思えないじゃないですか。方言も感情が高ぶると出るんですが、そこまで持っていかないといけないので、導きながらの撮影は大変でした」と振り返った。

 父・金栗信彦役は田口トモロヲ(61)母・金栗シエ役は宮崎美子(60)。倫太郎くんの演出に悪戦苦闘したが「『そんな間(ま)で、そんな新鮮な顔をするんだ』とか、大人の俳優さんたちも非常に刺激されるんです。倫太郎くんを暗い山道に誘ったら本当に泣き出したり、プロの子役にはない魅力が凄くよかったと思います」。スターキャストが勢揃いした第1話に比べ、第2話は地味。「金栗家、7人兄弟と言われても、ほとんどの視聴者の方はなじみがありません。相当強烈な個性で引っ張らないといけない思ったので、そういう人(倫太郎くん)を見つけるのに時間がかかり、撮影も苦労しましたが、第1話との落差も魅力で、凄くおもしろくなっていると思います」と手応えを示した。

 「金栗四三さん自身も、ただ丈夫になりたくて走っていただけなのに、そのままオリンピックに進んだ人。なので、計算高く見えない人がよかったんです。倫太郎くんの素朴さを勘九郎さんに引き継いでいただき、真っすぐ走っていく人になっていただけたと思います」

 自身の演出の特徴については「敢えて、あまりリハーサルをやらずに撮っちゃうクセはあるかもしれません」と分析。「そうすると、みんな、必死になるんです。必死になった画は、そこそこブレていたり、そこそこイケていなかったりもするんですが、やっぱり強いんですよね。その“1回性”の強さに懸けて撮っているところは一番の特徴かなと思います。今回の倫太郎くんも、ドキュメンタリーのように撮りました」と明かした。

 ドラマ全体の方針としては「日曜の夜に楽しめる痛快さ」がテーマで「時代劇の合戦シーンや殺陣の代わりに、スポーツや試合で肉体表現をして、躍動感あふれる映像にしたいと思っています」。そして歴史の時代感や空気感を大事にしたいとし「高校時代とか、3学期になると、歴史の教科書が途中で終わりませんか?近代史に弱い人が多いと思うんです。なので、第1話で話題になった天狗倶楽部(日本最初のスポーツ同好会)のように、資料を調べてビビッと感じたものを、どう創意工夫したら、視聴者の皆さんに楽しんでいただけるか。東京五輪の1964年までのたった半世紀で日本が激変したこと、それが僕たちが今いる場所につながっているということを、ドラマの中に肌感覚で取り入れていけたらと思っています。それが一番やりたいことですね」と“異色大河”に意気込んでいる。

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