久保王将か渡辺棋王か 新時代へ覇権争い 平成ラスト王将戦13日開幕

[ 2019年1月13日 06:30 ]

第68期王将戦七番勝負第1局へ掛川城をバックに日本ハム・吉田輝星ばりの“シャキーン”を決める久保利明王将(前列右)と渡辺明棋王。後列は掛川市のマスコット・茶のみやきんじろう(中央)、掛川茶PRレディの松葉理紗さん(左)と堀内爽加さん(右)=撮影・村上 大輔
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 久保利明王将(43)に渡辺明棋王(34)が挑戦する将棋の第68期王将戦7番勝負は13日、静岡県掛川市の掛川城二の丸茶室で第1局が開幕する。3連覇で5期目を目指す久保と、5年ぶり3期目の復位を狙う渡辺という実績十分の両者による平成最後の決戦。世代交代の波が押し寄せる将棋界で、今後の主導権も争う戦いになりそうだ。

 雄大な天守閣が両対局者を見守る掛川城決戦は今年、10年目の節目を迎えた。対局場の検分をつつがなく終え、6度目の対局となる久保は「自分の中では縁のある場所」としみじみ。4年ぶりに訪れた渡辺も「懐かしい感じ。落ち着いて対局に専念できる」と気を引き締めた。

 将棋界では昨年、歴史の転換点というべき出来事があった。新たなタイトル保持者が誕生し、一時期は8人が8つのタイトルを分け合う群雄割拠状態に。そして年末には、前年永世7冠を達成した第一人者の羽生善治九段(48)が、唯一保持していた竜王を失った。羽生にとって27年ぶりとなる無冠への陥落が久保と渡辺にもたらした意味は、決して小さくなかった。

 “羽生世代”の主役の名前が消え、43歳の久保は最年長にして唯一の40代タイトル保持者となった。「押し出されるようにそうなっただけ。上の世代がまだトップグループにいるので実感はない」。世代交代が進んだとの見方には慎重ながらも、久保の存在感がより大きくなったのは疑いの余地がない。

 若き天才の呼び名をほしいままにした渡辺も、30歳前後が並ぶタイトル保持者の中では気付けば年長2番目。通算獲得20期は最多で、2004年12月の竜王獲得以降のタイトル連続保持期間14年超も現役最長になった。「それは意識しているところ。継続できるようにしたい」と自覚は十分だ。

 2人は過去31局対戦し、久保の16勝15敗とほぼ互角。11年棋王戦では保持者の久保に渡辺が挑み、3勝1敗で久保が防衛した。過去には相振り飛車も2度あるが、立会人を務める郷田真隆九段(47)は「最近の渡辺さんなら相振りはない。(久保の振り飛車と渡辺の居飛車の)対抗型シリーズになるでしょう」と予想する。

 今年すでに2局に勝ち、11連勝中と絶好調の渡辺は「ここ数年で状態は一番いい。チャンスをものにしたい」と意欲。久保は「対策はしてきたつもり。今一番充実している相手で、厳しい戦いになる」と最強の挑戦者を警戒した。横綱同士による平成最後にふさわしい王将戦7番勝負は、将棋界の新たな時代の覇権をかけた戦いでもある。

 ≪前夜祭に170人≫午後6時半からJR掛川駅前の「掛川グランドホテル」で行われた前夜祭には、松井三郎市長、毎日新聞社の朝比奈豊会長、スポーツニッポン新聞社の河野俊史社長ら約170人が出席した。あいさつに立った日本将棋連盟の佐藤康光会長は「平成最後となる今期の王将戦は、タイトルホルダー同士の重厚なカード。内容の濃い7番勝負となる」と話した。

 ◆久保 利明(くぼ・としあき)1975年(昭50)8月27日生まれ、兵庫県加古川市出身の43歳。淡路仁茂九段門下。93年四段に昇段し、09年の第34期棋王戦で初タイトル。翌年の第59期王将戦で羽生善治王将(当時)に勝利し、自身初の2冠保持者に。タイトル獲得は王将4期、棋王3期の計7期。

 ◆渡辺 明(わたなべ・あきら)1984年(昭59)4月23日生まれ、東京都葛飾区出身の34歳。所司(しょし)和晴七段門下。00年3月に四段昇段を決め、史上4人目の中学生棋士に。タイトルは竜王と棋王の永世資格を持つほか、王将2期など歴代5位の計20期。

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