辻一弘氏がオスカー獲得!メーキャップ&ヘアスタイリング賞を日本人初受賞 3度目候補で悲願

[ 2018年3月5日 10:25 ]

悲願のオスカーを手にした辻一弘氏(AP)
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 映画界最大の祭典、第90回米アカデミー賞の発表・授賞式が4日(日本時間5日)、米ロサンゼルス・ハリウッドのドルビー・シアターで開かれ、メーキャップ&ヘアスタイリング賞は「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(監督ジョー・ライト、日本公開30日)の辻一弘氏(48)ら3人が受賞した。日本人の同部門受賞は初の快挙。辻氏は3度目のノミネートで、見事、自身初となる悲願のオスカーを手にした。

 辻氏は、英首相チャーチル役の英俳優ゲイリー・オールドマン(59)の特殊メークを担当。「もしも昨日が選べたら」(2007年)「マッド・ファット・ワイフ」(08年)に続くノミネートで、三度目の正直。2月18日に英国アカデミー賞のメーキャップ&ヘア賞、同24日には米メーキャップアーティスト&ヘアスタイリスト組合賞の特殊メーク効果賞に輝くなど、有力候補となっていた。

 辻氏は1969年、京都市生まれ。「スター・ウォーズ」を見て特殊メークに興味を持った。17歳の頃、毎週通う洋書店で開いた映画雑誌。米メークアーティスト、故ディック・スミス氏が俳優をリンカーンに仕上げた特殊メークを見て「これだ!」と将来を決めた。雑誌に書かれたスミス氏の連絡先に手紙を送り、文通を開始。「米国にもいいメークの学校はないから自分で勉強しなさい」と助言を受け、自身の顔を練習台に技術を磨いた。スミス氏がスーパーバイザーを務めた黒沢清監督のホラー映画「スウィートホーム」(89年)にスタッフで招かれ、上京。高校卒業直後のことだった。

 黒澤明監督「八月の狂詩曲」(91年)などを経て、96年に渡米。ある映画でオールドマンの特殊メークを担当する予定だったが、オールドマンが降板して叶わず。後に辻氏の彫刻に感銘を受けたオールドマンは、辻氏のドキュメンタリー番組のナレーションを担当。今回もオールドマン自らが辻氏に「君がメークを担当してくれなきゃ役をやらない」とメール。熱烈オファーに、映画界を12年に去り、芸術家となった辻氏も断れなかった。

 とはいえ、オールドマンとチャーチルは「似ても似つかず難題だった」。過去に多く手掛けたコメディー映画と違い、シリアスな内容。「少しでも違和感があると観客は物語に入り込めなくなる。ハードルは高かった」。約5カ月をかけて仕上げた力作は、オールドマンの素顔を忘れるほど、完璧な出来栄えとなった。

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