【夢中論】上白石萌音 はなうたと散歩が育んだ愛され声「自分では眠くなる声と…」

[ 2017年12月12日 09:20 ]

散歩に出かけるのに夢中と話す上白石萌音は笑顔がはじける
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 昨年公開されたアニメ映画「君の名は。」でヒロインの声を務め、大ヒットに一役買った女優の上白石萌音(19)。抜群の表現力と聞き心地がいい澄んだ声の持ち主に注目が集まり、歌手、声優、ナレーションなど声の仕事が急増。TBSドラマ「陸王」など話題作にも引っ張りだこだ。大きな魅力の“愛され声”は、幼い頃から歌いながらの散歩で育まれた。

 気がつくといつも歌を口ずさんでいる。その場で流れている曲を鼻歌で歌ったり、ハモってみたり。移動中にはスマホで洋楽やポップスなどさまざまなジャンルの音楽を聴く。

 「小さい時から歌は生活の一部でした」

 音楽好きの両親が、娘にもその願いを込めて付けた名前。音楽教師だった母親のおなかにいるときから洋楽やクラシック、ミュージカルナンバーに囲まれて育った。

 「家庭ではアバやスティング、カーペンターズがよく流れていました。ポップスを初めて聴いたのはずっと大きくなってからだったので、友達とは全然話が合わなかったです」

 故郷は鹿児島県で、お気に入りだった遊びは歌いながらの散歩。大自然の中で、伸びやかな歌声と豊かな表現力が育まれた。

 「両親と手をつないで、チューリップが咲いていたらチューリップの歌、海が見えたら海の歌とメドレーをしながら散歩するのが一番楽しい遊びでした」

 引っ込み思案だったが、歌ったり踊ったりしている時は不思議と照れや恐れが消えた。12歳の時に「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。初主演映画「舞妓はレディ」(14年)はミュージカル調で、歌と演技の実力が花開いた。「君の名は。」では男子高生と入れ替わる活発な女子高生役に声がはまり、興収250億円で邦画歴代2位の大ヒット。来年1月3日にはテレビ朝日で地上波初放送される。

 「初めてお会いする方が私のことを知ってくださっていることが増えて、それだけたくさんの人に届いたんだなと感じます」

 昨年歌手デビューし、今年はラジオ番組やテレビのナレーションのレギュラー番組がスタート。16日公開のアニメ映画「妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」でもヒロインの声を務める。

 「自分では眠くなる声だと思うんですけど、過大評価だと思うくらい私の声を好いてくださる方が多くて、大切にしないといけないなと思います」

 両親とチューリップや海の歌を歌った大好きな散歩の時間は今でも大事にしている。高校に入学し上京後も自宅近くの公園や川沿いを歩いたり撮影で地方を訪れると1人でぶらぶら。時には歌も歌う。

 「足が自然を求めてるのかな。友達と新宿に行っても、ショッピングじゃなくて新宿御苑に行く派です。佐賀でロケをした時には、ホテルの近くの川沿いが遊歩道になっていて、早起きをして往復2時間くらい歩きました。人がいなかったから歌ったりしながら」

 都内の大学に通う2年生。仕事と学業で多忙な合間を縫って、最近は高校時代の友人と等々力渓谷を訪れた。散歩の時は音楽は聴かず、スマホはポケットにしまっておく。

 「友達と一緒の時は“癒やされる〜”って話したり、自然の音を吸収してチャージですね。今はスマホもあるし、己と向き合う時間が少なくなってるので、意図的にぼーっとしに散歩に出かけます。無我夢中という言葉があるように、誰にも邪魔されず、なんのノイズも入ってこない時間。情報があふれてる世の中で、そういう時間が好きです」

 心身共に浄化されて生み出される自分ならではの“音”。名前の通り、最大の魅力となっている。

 「小さい時は普通の名前が良かったと思ってたけど、今は凄く好き。両親はこうなることを知っていて付けたんだなと思います」

 来月20歳の誕生日を迎える。節目の成人の年も舞台や映画など多くの作品に出演する。

 「最近は表現者という大きなくくりで求められることが多くなっているので、ちゃんと応えられる引き出しを持っていたい。その引き出しを作るためにどんどん学んでいきたいという気持ちです」

 しっかり抱負を語った後、「それに」とおちゃめな笑顔で付け加えた。「両親が凄くお酒が強いのでポテンシャルに期待されてます。お酒を楽しく飲める大人になりたいです」

 1メートル52の小柄な体には、澄んだ声に心の強さ、あらゆるポテンシャルが詰まっている。

 ≪映画妖怪ウォッチ 再び声優だニャン≫映画「妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」は、「君の名は。」以来の声優業。「“君の名は。”がなかったらもっと不安が大きかったと思う。仕事の垣根を越えて、これからも支えてもらえると思います」と自信になっている様子。同作はテレビシリーズの30年後が舞台で、主人公・ケータの娘で13歳のナツメの声を担当。人気キャラクター「ジバニャン」らと協力し人類滅亡の危機に立ち向かう役で「戦うシーンが大変で、1日だけのアフレコ収録で1キロちょっと痩せました。凄いエネルギーを消費してたんだと思います」と笑顔。同作に登場する「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎の声優・野沢雅子(81)とはイベントで初対面し「声優界のレジェンド。凄く光栄に思っています」と喜んだ。

 ◆上白石 萌音(かみしらいし・もね)1998年(平10)1月27日、鹿児島県出身の19歳。11年に「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。妹の萌歌(もか、17)がグランプリで初の姉妹受賞。同年、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」で女優デビュー。14年の映画「舞妓はレディ」で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。今年はTBS系「ホクサイと飯さえあれば」で連ドラ初主演。TBS「陸王」では主人公(役所広司)の娘役。

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