「直虎」高橋一生 大河3年越しで役探求「内に秘めたるもの」とは

[ 2017年5月1日 08:00 ]

大河ドラマ「おんな城主 直虎」で一際、存在感を示す高橋一生(C)NHK
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 TBS「カルテット」、映画「3月のライオン」など今年も快進撃が続く俳優の高橋一生(36)がNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜後8・00)にレギュラー出演。井伊家の筆頭家老・小野政次(まさつぐ)役で一際、存在感を示している。3年前の大河「軍師官兵衛」で自身が演じた役からバトンを渡された思いで「内に秘めたるもの」とは何かを模索。挑戦的に5回目の大河に臨んでいる。また「あまり器用じゃない」「役に没入している」などと自身のスタイルを明かし「芝の上に居(い)るだけで“芝居”。ただ、そこにいるだけで何が語れるのか」と、さらなる高みを目指す。

◆政次の“真意”が明らかに 柴咲との芝居に手応え

 高橋が演じる小野但馬守政次は、幼名・鶴丸として、おとわ(→次郎法師→井伊直虎)、亀之丞(→井伊直親)と幼なじみ。しかし、大人になると関係は一変。直親(三浦春馬)亡き後、直虎(柴咲コウ)が城主になり、直親の嫡男・虎松(寺田心)の後見をめぐり、直虎と対立した(結局、後見は直虎に)。今川寄りの立場を取る政次だが、第18話(5月7日放送)で“真意”が明らかに。直虎との関係はどう転ぶのか。

 高橋は第18話の撮影を振り返り「政次の今、考え得るベストな方法で直虎と向き合ったんだと思います。しっかり向き合えたと思います。芝居はセリフの応酬ではないと思っているので、言葉の間や呼吸を一番大事にしていたいんです。歌舞伎の世界なら、拍子木が鳴っている間じゃなく、拍子木と拍子木の間。そういうところに、人間の本質的なものは宿ると思うので。アイコンタクトといいますか、お互い通じるものを確認しつつ、芝居ができたと思います。芝居はどこまで行っても“ごっこ遊び”だと思う方もいるかもしれませんが、そうじゃない瞬間を求めて演じているのが俳優だと思っているので。そういう瞬間が柴咲コウさんとは確かにあったんじゃないかと、18回は特に思っています」と手応えを示した。

◆壮大な“実験”?「官兵衛」九郎右衛門からバトン

 大河ドラマ出演は「元禄繚乱」(1999年)「新選組!」(2004年)「風林火山」(07年)「軍師官兵衛」(14年)に続き、5回目。政次には「軍師官兵衛」で演じた寡黙な黒田家家臣・井上九郎右衛門に通じる部分があるとし、その“本質”を3年越しで引き継ぐ。

 「軍師官兵衛」の第6話。夜、九郎右衛門は笛を吹いている。官兵衛(岡田准一)が「何を大切に音を出す」と聞くと、九郎右衛門は「内に秘めたるものにございます」と答えた。高橋は、この「内に秘めたるもの」というセリフに“引っ掛かり”を覚えていた。

 「まさに政次は、もう1回、改めて『内に秘めたるもの』とは何かということを考えさせてくれる役。九郎右衛門からバトンを渡してもらった思いです。さらに長い形で、さらに密度の濃い形で『内に秘めたるもの』を見てくださっている方にいかに感じていただけるか、ということを試させていただいているような気がします。今回、僕が本当に伝えたかったことを敢えて言語化しなかったり、省略したりした時に『内に秘めたるもの』が見てくださる方のどこに響くのか。そういうやり方をさせていただけている状況もありがたいです。芝の上に居(い)るだけで“芝居”。ただ、そこにいるだけで何が語れるのかということを、やらなきゃいけないと年々さらに思うようになっています」

 「『軍師官兵衛』から3年経って、こうやって、もう1回、解釈し直したりできる」のが大河ドラマの魅力。「登場人物1人1人の小川を細かく精緻に描ける分、小川が大きな川=大河につながった時、この主流はあの小川からつながっているんだと感じていただける作りになっている。そういうことが表現できる、たぶん日本で唯一のドラマだと思います。50話という物量で、1人の人間を掘り下げていける。人間の深みみたいなものを時代劇で表現するというのは、僕にとっては意欲的で挑戦的。毎回そう思いながら出させていただいて、やっとしっかり学べてきている気がします」

◆「器用じゃない」役に没入→芝居は「自分の中から」

 政次が自身のパブリックイメージに近いと指摘されると「いろいろなイメージで、いろいろな解釈をしていただけるのが、俳優としては冥利に尽きると思っています」とし、己の芝居のスタイルに言及した。

 「自分では、あまり器用じゃないと思っています。(役の)誰かの人間性にジャンプするということができないんです。僕の芝居は、あくまで自分の中からしかできなくて。すべての役に対して、自分とこういうところが似ているというようなアプローチの仕方をしていないんです。いつも(役に)没入してしまって『これは僕だ』と思いながら(脚)本を読んでいるので、そこに差異を感じないまま(役に)入っていってしまう。自分と役との距離感を対比することによって詰めるみたいなことをしないので、いつも、役が腹を立てていれば僕も腹を立てて(脚)本を読んでいる。そんな感覚です。何かが降りてくるような、そんな瞬間を常に待っている感じがするんです。常々、僕は共演者の皆さんに役を作っていただいていると思っています。芝居を振られたら、それに返していっているうちに役が出来上がっていく感じです」

 どの役にも染まる変幻自在ぶりから“技巧派”と思いきや“憑依派”の一面は意外だった。話題作からのオファーは途切れることなく、今秋のNHK連続テレビ小説「わろてんか」(10月2日スタート、月〜土曜前8・00)の新キャストに名を連ねた。1作ごとに“キャリアハイ”を塗り替える中堅きっての実力派。「直虎」における芝居は、どこに行き着くのか。最後まで目を凝らしたい。

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