「真田丸」秀次事件は新説を採用 思い描いた人物像に合致

[ 2016年7月24日 10:00 ]

豊臣秀次を演じた新納慎也(C)NHK

 野心がなくひょうひょうとした好人物で、死ぬ必要はなかったのに自害してしまった――。NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)で今までにない描かれ方をした豊臣秀次。“新解釈”の秀次はどのように生まれたのだろうか。

 秀次は謀反をくわだてたことを理由に豊臣秀吉から切腹を命じられた、という解釈が従来は主流だった。素行の悪さから「殺生関白」と呼ばれたという説もある。だが、「真田丸」ではそうした説を採らなかった。

 秀吉は実の息子である拾(秀頼)を溺愛する一方で、数少ない豊臣家の一員である秀次にも目をかけ、気遣った。だが、秀次はその気遣いの意図を読み違えてプレッシャーを感じ、自分で自分を追い込み自害してしまう。今回このような描き方をする上で参考にしたのが国学院大学・矢部健太郎教授が2011年頃から主張する新説。著書「関白秀次の切腹」(KADOKAWA)で、秀吉は秀次を切腹させるつもりはなかった、秀次は無実だった、など通説を覆す新解釈を披露している。

 全て「関白秀次の切腹」で書かれた主張に沿ったわけではないものの、制作統括の屋敷陽太郎チーフプロデューサー(CP)は、今回このような描き方をした理由をこう語る。

 「この本で主張されているうち、今回のドラマで描いてみたいなと思ったのは、2つの冤罪があるということ。1つ目は秀次がひどい人だったということ。もう1つは秀次の切腹は豊臣秀吉の命令だったこと。(矢部教授は)この2つの通説両方に疑問を投げかけられていますよね。時代考証を担当している丸島(和洋)先生からこういう論文があるよと教えていただいて。三谷さんと私たちが描こうとしている秀次像、秀吉像に合致したということです」

 秀吉のような能力、カリスマ性は持ち合わせていなかったものの、人が良く憎めないキャラクターとして描かれた秀次。「普通にしていれば尾張の百姓か足軽、下級武士としてささやかな生活していたはずの人だったのに、叔父さんが異常な出世をした。叔父さんはそれだけの力があるかもしれないけど、おいっ子は自分で勝ち取ったわけじゃないじゃないですか。位だけが上がっていってしまって。生身な豊臣家の姿を描いてきた中では、この説はすごく納得いく感じがしましたね」(屋敷CP)

 秀次を演じた新納慎也(41)は秀次事件を描いた第28回(17日放送)の放送翌日、自身のブログを更新。「皆様が知っている史実とは違うかもしれません。でも、その史実が真実かは分かりません。現在残る豊臣秀次公の史実とはどれが真実なのかはわからないのです。だから、今回の様な説もあるということだそうです。『真田丸』の秀次像を見てもらって『こうだったのかもしれない』と、豊臣秀次公のイメージが少しでも変われば僕は嬉しいです。少なくとも、僕は今回の秀次像が真実であると信じています!天国で秀次公が『やっと真実が伝わった』と思ってくれていたら嬉しいな」と“新解釈”への思いをつづった。

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2016年7月24日のニュース