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ボカロPで初音ミクと世界へ 就活断念した青年のサクセスストーリー

DJとしてイベントに出演する八王子P

イマドキの仕事人

 一昔前はピアノやギターで作曲するのが定番だったが、最近は楽器を使わず歌まで作り出す音楽家がいる。歌詞とメロディーのデータをパソコン(PC)に入力し、歌声合成ソフト「ボーカロイド」で楽曲を作るボーカロイド・プロデューサー、通称「ボカロP」だ。大学時代に動画サイトへ初投稿した歌で一躍有名になり、世界に活躍の場を広げたボカロPがいる。

 アーティスト名は「八王子P」。一見どこにでもいそうな20代の青年は、本名も年齢も明かさず活動している。

 「僕の場合、基本的にPC1台あれば音楽を作ることができる。楽器が弾けないので」。都内の自宅にあるスタジオでサラリと話した。

 5畳半ほどのスタジオにはノートPC、大型スピーカー2台、モニター、マウス、キーボードなどの機器が並ぶ。キーボードもあるが、演奏するためではなく音色を確認する装置だという。モニターには、縦軸、横軸がある方眼状のボカロ編集ソフトの画面が表示され、長短の横棒や記号が規則的に配列されている。

 デジタル化された“譜面”。八王子Pは「マウスで一つ一つ打ち込んでいく。その繰り返しですね」と明かした。脳裏に浮かんだメロディーをPCに一音一音入力。実際に再生し、イメージに合えば次のフレーズへ進み、違えばやり直す。曲ができたら、今度はボカロ編集ソフトで歌詞を当てはめていく。モニターを見ながら、マウスを操作。次の瞬間、軽快なメロディーに乗って、人工的な女性の高音ボイスがスタジオ中に響いた。

 ♪ぼくらはこの大きな星のなかでずっと踊り続けるんだ――。

 ボカロから生まれたバーチャル歌手「初音ミク」が歌う「Blue Star feat.初音ミク」。初音ミクの世界ツアーのテーマ曲として、八王子Pが制作したものだ。

 出身は山形県。父親が工業高校の教師で、幼少の頃から家には自由に使えるPCがあった。高校時代、バンドを組んでいた友人たちの話が愚痴ばかりで「面倒くさそう」と思い、バンドに興味が向かなかった。DJを疑似体験できる音楽ゲーム「ビートマニア」にはまり、デジタルサウンドにのめり込んだ。

 都内の大学へ進学し、自由な時間が増えたためPCで本格的に楽曲制作を開始。09年12月、動画サイト「ニコニコ動画」へボカロデビュー曲「エレクトリック・ラブ」を投稿した。ヒットの目安となる1万回を悠々超え、10日間で再生回数10万回を突破。いきなり「殿堂入り」を果たし「こんなに自分の曲が聴いてもらえることが今までなかったから、正直怖かった」と振り返る。

 ただ、リーマンショックで就職難となったこともあり、就職活動からリタイア。音楽で生計を立てることを決めた。家賃3万5000円の古アパートに住み、コミックマーケットで自作のCDを販売するなどして生活費を工面。ボカロ曲を次々と発表し、関係者の“耳”に留まって12年、大手レーベルからCDデビューした。

 DJとしての活動も盛んでアジア、北米、中南米、ヨーロッパなど世界を飛び回る。動画サイトを通じて楽曲と名前が知られているからだ。今月25日、米シアトルで行われた初音ミクの世界ツアーのステージに八王子Pの姿があった。テーマ曲「Blue Star」の制作者としてDJを務め、米国人ファンらから大歓声を浴びた。

 国内の音楽市場規模は全盛期の3分の1にまで縮小し、新興ジャンルのボカロでさえ飽和状態にあるとされる。「同じ年代よりは(賃金は)もらっている。貯金も多くしている方だと思います」と語る一方、「音楽をお金に換えるのが凄い難しい時代になった」と危機感も抱く。それでもボカロ曲を引っ提げ、多くの日本人歌手、音楽家が夢に見る「世界ツアー」をさらりとやってのける。不透明な音楽業界の中で、八王子Pは今後、どんな音を奏でていくのだろうか。

[ 2016年5月30日 08:40 ]

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