「IPPON」芸人のカッコよさ表現 真剣勝負も根底はパーティー

[ 2015年5月22日 09:00 ]

芸人のカッコよさを表現する「IPPONグランプリ」

 年2回の大喜利の祭典、フジテレビ「IPPONグランプリ」は23日午後9時から第13回大会が放送される。番組の世界観はスタート当初から芸人の「カッコよさ」を引き出す洗練されたもの。真剣勝負の場だが、根底にあるのは大喜利を楽しもうという「パーティー感」。竹内誠プロデューサーが演出術と企画意図を語った。

 「お台場笑おう会」から招待された10人の芸人がA・Bブロック5人ずつに分かれ、さまざまなお題に回答。Aブロックの審査はBブロックの芸人が行う。採点ボタンは1人2個。5人全員が2個のボタンを押し、合計10点満点になると「一本」。各ブロック4問(1問につき制限時間7分)出題され、一本の数を競う。両ブロックの一本最多獲得者が決勝(審査は残る芸人8人、16点満点)で激突。「芸人大喜利王」を決める。

 竹内プロデューサーはフジテレビ「人志松本のすべらない話」「ワイドナショー」(日曜前10・00)などの演出も担当。芸人の頭の回転の速さを日頃から実感していた。

 「芸人さんは自分をおとしめて笑いを取る、人に“笑われる”のが仕事という一面もあると思うんです。でも、本当は頭のいい人たちだと常々思っていて。そこを何とか表現したいと思った時、『IPPONグランプリ』の世界観と芸人さんのマッチングにギャップがあって、非常に新鮮でした。カッコいい人がカッコいい場所にいても、あまり目立たないと思うんです。でも、この番組は、一般的にはカッコいいと見られていない芸人さんがカッコいいステージに立つ。それによって、僕がもともと『芸人さんはカッコいい』と思っていたところに持っていけると思いました。芸人さんはカッコいい場所が似合う人たちなんだ、という一面を出したかったんです。観覧ゲストの方々も芸人さんが『カッコいい』『モテるのが分かる』とおっしゃいます」

 アメリカのアカデミー賞やグラミー賞などショーアップされた授賞式を意識したスタイリッシュな世界観は、番組の隅々に行き渡る。美術や衣装は黄色と黒で統一。矢沢永吉(65)の「止まらないHa~Ha」が流れる中のオープニング映像は、黄色と黒のイラストで出場者を紹介。見る側のワクワク感を増幅する。

 黄色と黒のキーカラーは、クエンティン・タランティーノ監督(52)によるアクション映画「キル・ビル」のビジュアルに惹かれたもの。竹内プロデューサーは「バイオレンスな内容は関係ないですよ」と笑いながらクギを刺した。

 矢沢の楽曲を選んだのは、第1回(2009年12月)の準備中、徹夜作業明けの午前6時、たまたまライブDVD映像を目にしたことから。大会チェアマンを務める「ダウンタウン」の松本人志(51)が矢沢好きなことも「後から知ったんです」という偶然だった。

 セットは、好きなサッカーからヒントを得た。サッカースタジアムからの中継で、リポーターが競技場の高いところにおり、その背後にピッチと観客席が映り込むアングルが「カッコいい」と参考に。“2階席”にいる松本をとらえる映像は後ろにプレーヤーと観客が見えるようにしている。

 「『これ、いいな』と最初に発想したもの、天然で思いついたことをかけ算していくんです。あまり最初に意味から入ると、自分がジャンプできないので」という竹内プロデューサーのクリエイティブ術で、過去にない“カッコいい大喜利番組”が出来上がった。

 過去最多3回の優勝を誇る“絶対王者”バカリズム(39)は「黄色と黒を見ると、胃が痛くなるんです。大会として開催している以上、競技性もありますが、一番はお客さんを笑わせること。大喜利は本来は楽しいもの。楽しんだ結果、優勝できれば理想的ですね」と語った。

 「芸人大喜利王」を決める番組だが、もともとは、そして今も大喜利を楽しむ「パーティー」。それが「IPPONグランプリ」を立ち上げる時の一番の狙いだった。

 若手に門戸を開く「IPPONスカウト」枠を除けば「予選を勝ち抜かないと出られないコンテスト番組とは違います。あくまで『お台場笑おう会』という団体が、芸人さんを招待するもの。『また来てくださいね』。何回でも出ていただけるんです」。出演者には実際に招待状を送り、収録終了直後に「きょうのスコア表」なる回答一覧が手渡される。

 「芸人の皆さんの答えをボーリングのスコア表みたいにして、帰り際にお渡ししています。一本を取った回答は黄色にして、全員がどう答えたかが分かる表です。収録中にADさんが速記して作っています。ちょっとしたことですが、招待状やスコア表があると、芸人の皆さんも他の番組とは違う雰囲気を感じていただけると思うんですよね。パーティーの主催者としての、せめてもの“おもてなし”です」

 「LET’S PARTY」――。見る側も出演者と一緒にパーティーを楽しみたい。

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2015年5月22日のニュース