松ケンパパ“羽化”演技に深み 子供が表情変えてくれる

[ 2013年2月3日 06:55 ]

インタビューに答える松山ケンイチ。ほとんど表情を変えない

 舞台「遠い夏のゴッホ」が3日、東京・赤坂ACTシアターで初日の幕を開ける。セミ役で主演する松山ケンイチ(27)は、先月10日に第2子の長女が誕生したばかり。「子供が(自分の)表情を変えてくれる」と明かし、演技も深化しつつある。

 初めての舞台で、演じる役はセミ。演出と脚本を手掛ける西田シャトナー氏と話し合う中で、松山自らが選んだ。「どうせやるなら、誰も演じたことのないものをやりたかった。最終的な演技の形が見えないからこそ面白いと思った」。意欲をかき立てられた。

 昨年のNHK大河ドラマ「平清盛」に主演後の初仕事。「どの仕事も同じ気持ちでやっている」と強調する。だが1年以上かかりきりになった「清盛」には、深い思い入れがある。「同じ人間をやり続け、その一生を演じるのは貴重な経験だった。その後だからこそ、新しいものをという思いはあった」と語る。

 “カメレオン俳優”と呼ばれ、演じる作品ごとに新たな顔を見せてきた演技派。ただ、インタビューでは、ほとんど表情を変えない。視線は常に左斜め下に向ける。それだけに、質問を始める直前、偶然顔を合わせた際の笑顔が印象的だった。「テレビで見るより、背が高いですね」と声を掛けると「よく言われます」と穏やかに笑う。「話すのは苦手です」と明かす時の困り顔も、誠実さがにじむ。

 私生活では1年間で一気に2児の父となった。昨年1月、妻で女優の小雪(36)との長男が生まれ、先月は長女が誕生。父となって一番の変化を聞くと「自分のやってきた作品は残ることが多い。恥ずかしくない仕事がしたいと思うようになった」と語気を強めた。責任感が増しただけでなく、演技面に好影響も出ている。「休日は家族と過ごすことが多い。リフレッシュできる。子供が自分の表情を変えてくれる」という。ただ、具体的な変化についてたずねると「本に書いてあるので読んでください」と多くは語らない。28日に発売する初の著書「敗者」では、育児の際に赤ちゃんにつられて笑う姿などを書いており「ほほ笑むというのが、どういうものなのか分かった」と記している。

 舞台で演じるセミは、土の中で将来を約束した恋人セミより、1年早く地上に出てしまう設定。運命に逆らい、翌年夏に再会するために懸命に生き抜く。「虫の死生観を知り、自分の生き方や考え方を振り返っていただけると思う。物事は違う角度から見ることで、多くの発見がある」と物語の魅力をアピールする。虫は死んだら他の虫のエサになり、その虫も何かのエサになる循環で生きている。人間ほど、死を恐れていないともいわれる。「人間だって“自分のために”と同じくらい“誰かのために”という思いを持って生きている」と強調する。そう思えるのは、父親になったからだろうか--。

 「やっぱり、一番近くにいる存在のために何かをしたいというのは、あるでしょ」。力を込めた。セミに扮しても新しい顔を見せてくれそうだ。

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