[ 2010年11月12日 06:00 ]

最新の研究を基にした解釈に定評があるパーヴォ・ヤルヴィ(C)Mark_Lyons

 主催の東京オペラシティが配布した資料によるとヤルヴィは吉村渓氏のインタビューに対してシューマンの交響曲チクルスに取り組んだ理由について「生誕200年の記念イヤーであることに加えて、私がシューマンの音楽に対して長い間、特別な親近感を抱いていたことも大きい。その感情は“愛している”と言っていいくらい熱烈なもの」と語っている。そのくらいの深い思い入れをもって臨むシューマン・チクルスだけにヤルヴィなりの特別なこだわりが演奏の随所に反映されることは容易に想像できる。

 ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルといえば、作曲家在世当時の奏法、いわゆるピリオド奏法の要素を取り入れつつも、最新の研究を基にした独自の解釈によるベートーヴェンなどの演奏で世界的な注目を集めている。
シューマンへのアプローチに関してヤルヴィは「細部への目配りが必要なことはベートーヴェンと同様だが、もっと重要なのは“どこまで恥ずかしがらずにあからさまに感情をさらけ出すか”ということ。古典派で重要な様式や形式感もシューマンでは二の次になる。極端な感情の表出を厭わず、そのコントラストを誠実になぞらなければいけません」と説明している。なるほど、これまでにないほどの起伏に富み、振幅の激しいシューマンが聴けそうだ。

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2010年11月12日のニュース