[ 2010年10月16日 06:00 ]

第2幕、青で統一されたステージ。イタリアン・モダン風のホールにはなぜか椰子の木が

 ステージ上ではホテルに飾られている「接吻」や「ユーディット」といったグスタフ・クリムトの名画、ウィーンで生まれたトーネット社の曲木の椅子、バウハウスデザインのテーブルなどの名作家具がアルローの意図を的確に表していました。しかし、小道具は1930年代のウィーンをベースにしていながらも、どこか辻褄の合ない不可思議な世界が構築されていたことも印象的でありました。舞踏会のホールには満月が出ているかと思えば、ホテルでは晴れ間が覗いて見える空から雪が降っていたりと…。また、イタリアン・モダン建築風のホールには椰子の木が並んでいるのも目を引きました。

そして、森英恵による衣裳も特定の時代や1930年代の流行性を感じさせないもの。さらに第2幕では舞台、衣裳、照明の全てが青で統一されていて、まるで夢物語を見ているかのようなのです。果たしてアルローの狙いは何だったのでしょうか。コンシェルジェは言います。
 「アルローは“光の魔術師”と呼ばれるだけあって、これまで観てきたステージは巧みなライト・コントロールによって登場人物の心理や場面の状況を実に分りやすく、しかも鮮やかなタッチで表現してみせることが多かった。バイロイト音楽祭における“タンホイザー”などはその典型例。しかし、今回はそうした手法は影を潜め、演技や所作には細かくこだわっていたものの、いつものアルローとは一味違ったアプローチだったように感じた。小谷さんが受けた印象と同じく第2幕の青による統一は、私にも彼の真意を読み取ることは出来なかった。アルローほどの演出家が単なるイメージだけで舞台を特定の色に染め上げるとは考えにくい。しかし、青はウィーンを象徴する色ではないし、時代を表現するカラーでもないだけに、まさしく謎といえる」。

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2010年10月16日のニュース