人情派役者逝く…藤田まことさんが急死

[ 2010年2月19日 06:00 ]

ことしの1月、時代劇専門チャンネルの特別番組のナレーションに臨む藤田まことさん

 テレビのお笑い番組「てなもんや三度笠」や時代劇「必殺」シリーズなどで人気を集めた俳優の藤田まこと(ふじた・まこと、本名・原田真=はらだ・まこと)さんが17日午前7時25分、大動脈からの出血のため大阪府吹田市の大阪大病院で死去した。76歳。東京都出身。通夜は18日に大阪府豊中市内で近親者のみで営まれ、19日に葬儀が行われる。当たり役そのままの庶民派、人情派として幅広い層に愛された役者人生だった。

 「てなもんや…」の時次郎、必殺シリーズの中村主水、「はぐれ刑事純情派」の安浦刑事と、テレビ史に残るキャラクターを演じてきた藤田さん。30億円といわれた巨額負債や大病も持ち前の粘りではね返してきた中、突然の最期だった。
 08年5月に食道がんを手術。昨年11月からは慢性閉塞(へいそく)性肺疾患で休養したが、今年1月15日にCS放送の時代劇専門チャンネルのナレーションで復帰。元気な姿を見せていた。
 関係者によると、急変したのは今月16日。普段通り病院で下半身のリハビリを2時間した後、自宅で夕食を取り、午後10時ごろに風呂に入ろうとした際に突然吐血。病院に搬送されたものの、意識は戻らなかった。
 翌17日朝、幸枝夫人と長女、孫らが駆け付けたが、帰らぬ人となった。最近は体調も良く「必殺」の新シリーズの台本に目を通し、張り切っていたという。先月26日には大阪でCM撮影に臨むなど順調だったため「家族は大きなショックを受けている」(関係者)という。松竹京都撮影所の関係者も「10日前に“これからもよろしく”とあいさつに来た。2月5日放送の剣客商売スペシャルの視聴率が良かったので“またやろう”と話していたのに…」と信じられない様子だ。
 33年(昭8)4月13日、東京都生まれ。父は無声映画で活躍した藤間林太郎。高校中退後に司会業で地方を回り、大阪で喜劇俳優に。62年、時代劇バラエティー「てなもんや三度笠」で人気者となり「当たり前田のクラッカー」などのフレーズで日本中を沸かせた。
 その強烈なイメージからしばらく役が付かず引退も考えた中、オファーを受けたのが73年から出演した必殺シリーズ。「ムコ殿」といびられる恐妻家の殺し屋・中村主水役は、本人いわく「情けない男の役をみんなが断ったから私に来た」という運命の当たり役。その後も88年から21年間、主演ドラマ「はぐれ刑事純情派」が放送されるなど人情味あふれる演技でロングラン作品を生んだ。
 大阪の盛り場で「北の(南都)雄二か、ミナミのまこと、東西南北藤山寛美」と呼ばれた遊び人だった一方、周囲が「働き過ぎ」と心配するほどの芸の虫。93年に夫人の事業失敗で30億円の負債を背負った時には「主水御殿」と呼ばれた豪邸を売却。愚痴も言わず休日返上で働く姿に債権者たちが仕事を探して応援したほど。藤田さんは「10年で完済した」と誇らしげに明かしていた。
 近年は健康面に不安を抱え、08年に食道がんで明治座「剣客商売」を、昨年11月には慢性閉塞性肺疾患でドラマ「JIN―仁―」を降板していた。通夜は18日午後7時から、生前の藤田さんの意向により近親者のみで営まれた。喪主は長男の原田知樹(はらだ・ともき)氏。遺族は19日の葬儀後、コメントを出す予定。後日、お別れ会が開かれる。

 ◆藤田 まこと(ふじた・まこと)本名原田真(はらだ・まこと)。1933年(昭8)4月13日生まれ、東京都出身。父は無声映画時代のスター・藤間林太郎。幼少期に京都にうつり、10代から司会やものまねをこなした。62年から出演したコメディー「てなもんや三度笠」が大ヒットし、関西で64%、関東でも40%を超える視聴率を獲得。「あたり前田のクラッカー」「耳の穴から指突っ込んで、奥歯ガタガタいわしたる」のフレーズなどで日本中を沸かせた。中村主水役を演じ当たり役となった「必殺シリーズ」は31シリーズ中、16シリーズに出演。舞台でもミュージカル「その男ゾルバ」で芸術選奨文部大臣賞受賞。02年紫綬褒章受章。

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2010年2月19日のニュース