森光子「放浪記」二千回達成!今度は全国で

[ 2009年5月10日 06:00 ]

放浪記上演2000回を達成し森光子はファンの祝福に応える

 女優の森光子(89)が誕生日の9日、東京・丸の内の帝国劇場で、主演舞台「放浪記」の上演2000回を達成した。1961年の初演から約48年。日本人俳優単独上演記録を自己更新する不滅の金字塔を打ち立てた。「すっごい幸せ」と感無量の表情。終演後にはNHKの特別番組に出演後、この日2度目の記者会見を開き、全国各地で公演を続けたい意向を明らかにした。

 終演から約3時間後。2度目の会見で口にしたのは「放浪記」続演への熱い思いだった。
 「私は“出前”をします。電話してもらって“来てくれ”“見たい”という人がいるところに行きたい」
 これまで17都道府県で公演したが「まだ見ていらっしゃらない方がたくさんいます」と全国の観客に思いをはせた。
 記録達成の瞬間は3時間50分にわたる公演の中で最も静かな時だった。舞台で1人きりのカーテンコール。中央に正座し、客席に向かってゆっくりと左手を差し出し、次にまたゆっくりと右手を差し出す。会場は静まりかえり、物音ひとつ漏れない。48年間、2000回の重みがずっしりとのしかかっているようだった。最後に深く頭を下げると、客席から「日本一!」の声が飛んだ。
 2000回を支えたのは「プライド」「根性」だと親しい関係者や共演者は常々語っていたが、カーテンコールの後に用意された特別カーテンコールのあいさつの中で森自身がこう明かした。
 「私は生意気な女優でございます。若い時、私より先輩の皆さんを見ながら川柳を作りました。“あいつより うまいはずだが なぜ売れぬ”」
 客席が笑いと拍手に包まれると「とても生意気ですけれど、その気持ちはいつも忘れないできました。こんな生意気なことを言うと、皆さんに怒られると思ったけれど、きょうは言っちゃいました。堪忍してください」と笑みをこぼした。
 記録達成への道のりが平たんなわけではなかった。恒例だった劇中のでんぐり返しは06年の公演で中止。今年初旬は体調も思わしくなく、気持ちも落ち込み、親しい歌手の和田アキ子(59)からしった激励を受けた。この日の終演後も「きのう(8日)はあまり眠れなかった」と重圧があったことを打ち明けた。
 今公演の千秋楽は今月29日。まだ17公演残っている。2000回は決してゴールではない。2011年の上演50周年も控えている。特別カーテンコールでゲストのあいさつに感涙し「もっと表現の豊かな女優になりたい」。幕が下り切るまで頭を下げながらも視線はずっと客席を向いていた。

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2009年5月10日のニュース