観光客殺到!タブー続出の純愛ドラマにアラブ熱狂

[ 2008年11月7日 08:31 ]

トルコの純愛テレビドラマ「ヌール」の主人公をプリントした服

 アラブ諸国で8月まで放映されたトルコの純愛テレビドラマ「ヌール」が大ヒットし、トルコのロケ地にアラブ人観光客が殺到するなど、日本の「韓流ブーム」を思わせる熱狂ぶりだ。大家族が舞台のドラマで、ヒットの背景には、伝統的な家族観に親近感を抱きながらも、女性の自立など新たな価値観にも引かれる現代アラブ人の意識が垣間見える。

 「ムハンナド!」。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイのテレビ局MBC前。長身で青い瞳をしたトルコ人男優が出てくると、集まった数百人の女性たちが「ヌール」での役名を叫び、黄色い声を上げた。
 「ヌール」はトルコでの人気はいまひとつだったが、MBCがアラビア語に吹き替え、3月末から毎夜アラブ全域で放映し、女性らの間で大ブームに。最終回は8500万人が見たという。
 ファッションデザイナーとして成功することを夢見る女性ヌールと、彼女を優しく支える夫ムハンナドを主人公に、2人がさまざまな試練を乗り越え、愛を深めていくメロドラマ。美しい衣装に豪華なセット、夢のような生活はあこがれの的になった。
 アラブ諸国では「ヌール」「ムハンナド」という名の赤ちゃんが急増し、ドラマに夢中になった妻が夫から離婚されるケースも。撮影が行われたトルコ・イスタンブールの豪邸のセットにはアラブ人があふれ、ベッドで横になったり、カーテンを触ってうっとりする姿が見られた。
 脚本を書いたセマ・エルゲネコンさんは「アラブ人の熱狂ぶりには驚いた」と打ち明ける。
 婚前交渉や中絶、飲酒なども扱っていることから、サウジアラビアの高位イスラム聖職者が「このドラマはイスラムに反する」とするファトワ(宗教見解)を出したことも話題を呼んだ。
 米国のドラマも多数放映されている中で、トルコ作品がこれだけヒットしたのはなぜか。「ヌールは強く、自立しており、完ぺきなアラブ人女性」と話すのはバグダッドの女子大生アシール・ハヌーンさん(23)。夢を追うヌールの生き方に共鳴するという。
 バグダッドの公務員アハメド・サミールさん(28)は「ドラマを見て、恋人に優しく接するようになったよ」。男性中心のアラブ社会で、妻と平等な関係を築こうとするムハンナドの優しさは際立つ。
 レバノン大のタラル・アトリシ教授(政治社会学)は「舞台がイスラム教徒の大家族であることが親近感を呼んだ一方、男性中心の価値観に縛られない新しい理想の夫婦像をアラブ社会に示した」とヒットの理由を分析した。(共同)

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2008年11月7日のニュース