松本幸四郎「勧進帳」千回公演へ巡演開始

[ 2008年9月1日 06:00 ]

全国巡演初日を迎え「勧進帳」弁慶を演じる松本幸四郎

 歌舞伎俳優の松本幸四郎(66)が31日、埼玉県の川口総合文化センターで「勧進帳」の弁慶1000回上演に向けてカウントダウンの全国巡演をスタートさせた。弁慶は、16歳の時から50年間演じ続けている役。この日で959回目となった。節目となる1000回の記念公演は、10月15日に奈良の東大寺大仏殿前で行われる。

 飛び六方で花道から退場した弁慶が、再び花道に登場した。孤軍奮闘で舞台を盛り上げた幸四郎は「はーっ」と深呼吸。「高麗屋!」の掛け声が飛び交う中、手を振って一礼。歌舞伎座や国立劇場では見られない、全国巡業ならではの幸四郎に、2000人の観客は大きな拍手を送った。
 「人の心を動かすのが難しい昨今、役者はそれを商売にできる。うれしいことですね」。終演後、幸四郎は、まだ息を切らしながら笑った。
 数年に1度、約1カ月にわたり全国を回るが、今回はこれまで以上に気合が入っている。それは一大イベントが控えているからだ。平城遷都1300年記念行事の一環で、10月15日に東大寺大仏殿前で奉納歌舞伎「勧進帳」を上演するのだ。「きょうから少し気分が違う。感慨深い」と話した。
 当日は、弁慶を演じて1000回目の自身にとっても記念の公演。「大仏さまの歴史に比べたら1000回なんて。大仏さまがまばたき1回するようなものですよ」と謙そんしながらも「共演者や裏方さん、誰が欠けてもできなかったこと。僕的には奇跡です」と、晴れの日を心待ちにしている。
 祖父の七代目幸四郎は、明治末期から昭和21年まで「勧進帳」を1700回演じた、まさしく“弁慶役者”。「1000回を超えたらどうしようかな。気が抜けるかなあ」と幸四郎。「勧進帳」は東大寺再建を題材にした演目だけに、節目の記録には最高の舞台となる。

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2008年9月1日のニュース