【虎番リポート】前中日の中田翔氏が「顔も名前も知らない若手」にバットを贈ったワケ

[ 2025年12月15日 05:15 ]

阪神・今朝丸
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 阪神・今朝丸が、今季限りで引退した前中日中田翔氏からバットを贈られたのは少し知られた話だ。ずっと気になっていた。ともに甲子園のスター選手という共通点があるものの、接点が見当たらない。なぜ渡したのか。先日、中田氏に会う機会があり、尋ねた。

 「あの試合、彼は打たれていたにもかかわらず、自分に真っすぐ勝負をしてくれた。その男気というか、俺は何かを感じるところがあった。10個も20個も年齢が自分より下だけど、かっこいいなと感じた。だから、その打席で使ったバットをプレゼントしたいなと」

 9月15日、ナゴヤ球場での2軍戦での出来事だった。打点王を3度獲得した中田氏にとって2軍での現役最後の試合で、1打席限定で出場した。初回1死一、二塁。36歳は19歳と対戦した。

 「俺は基本的に選手の顔と名前を覚えないから誰か分からなかったけど、若いというのはわかった」

 連打でピンチを背負った若手は、失点覚悟でストレートを続けてきた。大阪桐蔭高時代から「怪物」として名前をとどろかせた男として、力と力の勝負がうれしかった。ボールが2つ先行し、“この試合で四球だけは許されない”という必死さもマウンドから伝わった。「その姿を見て余計に胸が苦しくなった」。遊飛の結果に悔しさはなかった。打席後、バットに「真っ向勝負ありがとう」と書いて関係者に預けた。

 「彼がバットを欲しいと言ったら渡して、いらなかったら捨ててと伝えた。そのあとのことは知らない」

 後日談を、私は中田氏に伝えた。「今朝丸選手は子供のころ、中田さんのファンでした。そのバットを寮の部屋に飾っていますよ」と。ありがた迷惑ではなかった結末を知って、コワモテのヒーローは相好を崩した。

 プロ生活18年を全うした強打者は言う。ここぞの場面での直球勝負は「プロ野球選手の誰もが持っていなければいけない部分」なのだと。今季2軍で5勝無敗だった今朝丸は、気迫のこもったストレートで、球界の大先輩から合格点をもらったのだった。(倉世古 洋平)

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