大谷翔平10勝 104年ぶりの2桁勝利&2桁本塁打達成 ベーブ・ルース以来2人目

[ 2022年8月11日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス5ー1アスレチックス ( 2022年8月9日    オークランド )

<アスレチックス・エンゼルス>力投する大谷(撮影・大森 寛明)
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 時空を超えて、伝説となっていた偉業が現代によみがえった。エンゼルスの大谷翔平投手(28)が9日(日本時間10日)、アスレチックス戦に「2番・投手兼DH」で出場し、6回4安打無失点で自己最多10勝目をマーク。1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶり2人目の「2桁勝利&2桁本塁打」を達成した。昨季も含めて通算7度目の挑戦で、重たい時代の扉をこじ開けた。打者では25号ソロを放ちメジャー通算118号本塁打とし、日本選手ではイチローを抜き単独2位となった。

 いつも通りの大谷だった。オークランド・コロシアムの、薄暗いビジタークラブハウス前の通路で行われた「囲み取材」。赤いアンダーシャツ姿のままで、素足にサンダル。野球の神様ベーブ・ルースが13勝&11本塁打した1918年以来、104年ぶりの快挙にも表情を変えることなく、淡々と言葉を紡いだ。

 「光栄だと思うけど、シーズン中に自分の今の数字がどういう印象かは分からないもの。終わった後に、こんなシーズンだったかなと振り返れればいい」

 「2桁勝利&2桁本塁打」にあと1勝と迫ってから、3連敗。同じくあと1勝から3試合勝ち星を逃してシーズンを終えた昨季も含めて、「7度目の挑戦」という難産だった。「(10勝に)いくか、いかないか、印象は大きく変わる。そこが違う」。6回4安打無失点で自己最多10勝目。打者では25号ソロを放ち、二刀流の輝きが際立った。

 1918年8月8日。ルースはシーズン10勝目を挙げ快挙を達成。大谷は日本ハム時代からルースと比較され続け、伝記本を読んだこともある。かつて「本の中でしか見たことない、神様みたいな存在」とメジャーへの思いをはせ、海を渡った。その104年とわずか1日後の達成だったことも不思議な導きか。二刀流に懐疑的な批判の声などには一切耳を貸さず、自らを信じて日米10年目でたどりついた一つの頂だった。

 大リーグは今夏のドラフト会議の1巡目で「二刀流選手」が2人指名されるなど、本格的に二刀流を目指す選手、育成を目指す球団が現れ始めている。二刀流という登録ポジションが生まれ、今季から降板後もDHとして打席に立てる「大谷ルール」まで生まれた。球界で広がる二刀流の輪。このタイミングで歴史の扉をこじ開けた意義は大きい。

 その104年ぶりの快挙につなげたのが「投手・大谷」の飛躍だった。特に今季の軸球となるのが3種類のスライダー。曲がりの大きいもの、小さいもの、カットボールのように速いものに分類され、捕手スタッシによれば「同じサイン」。この日も試合前に水原通訳と3人で膝を突き合わせ、タブレット端末の映像で1番打者から順に傾向と対策を確認。データと投手としての嗅覚を頼りに、自ら判断して投げ分けているのだという。

 昨季あと1勝、届かなかった聖域に、2カ月を残して足を踏み入れた。ルースでも1918年の1度だけだった。大谷はあと何度積み重ねるか。「単純に(今まで投打)2つやってる人がいなかったというだけかなと思う。それが当たり前になってくれば、普通の数字かもしれない」と話す表情は自然体に映った。見えている世界が違うのかもしれない。104年もの間「不可能」と考えられていた時間の重みが、決して普通の数字ではないことを雄弁に物語っている。(柳原 直之)

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2022年8月11日のニュース