【新井さんが行く!!】甲子園球児よ 最後の時間を心から楽しんで

[ 2022年8月2日 07:00 ]

新井貴浩氏
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 高校野球は最高だ。

 今夏の地方大会は全て終わり、全国から甲子園出場校が出そろった。勝ち上がった高校より、既に敗退した高校の方がはるかに多い。長男も最後の夏を終えた。一人の親として、たくさんの感動をもらった。

 選手たち一人一人はもちろん、周りの保護者や応援している人たちにも、それぞれの物語やドラマがある。たとえば、鹿児島大会の決勝で惜しくも敗れた大島は離島の島民が総出になって応援。故郷を離れた人たちも心を寄せた。高校野球には地域を一体化させる力がある。熱量がある。

 3年間というけど、実質は2年半。限られた時間で“終わり”は決まっている。終わりたくないけど、その“終わり”へ向かって、仲間と一生懸命になるから、見る人を引きつけるのだと思う。

 長男と同世代の子供たちは入学時からコロナ下での活動を強いられてきた。たくさんの制約があり、もし感染したら周りに迷惑をかけるという不安とずっと背中合わせだった。経験しなくていいことまで経験して、苦しい時間だったと思う。

 楽しくやることは大切。でも、苦しい体験もまた大人になる過程では大切だと思う。社会というのは時に理不尽なことも起こるから。ここ数年の球児たちは耐え忍ぶことが本当に多い。大学や社会人で野球を続ける人もいれば、高校を最後に野球を離れる人もいる。この経験はきっと、この先の人生で糧になる。

 野球はずっと選手としてやる側だった。今回は親として外から見守る側に回った。振り返ると、2年半はあっという間。高校時代に両親が同じように支えてくれたのだと思い、改めて感謝した。たくさんの発見もあった。なかなか部員の集まらない学校の監督から話を聞く機会にも恵まれた。強豪校に勝つにはどうするか?思ってもいなかった作戦など、本当にいろいろなことを考えていた。勉強にもなった。

 甲子園大会は6日に開幕。選手たちは今まで、たくさんのものを背負ってきたと思う。目標だった夢の舞台。もう背負わなくていいよ、と言葉をかけてあげたい。最後の時間を、心から楽しんでほしい。(スポニチ本紙評論家)

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2022年8月2日のニュース