これであなたも「走塁妨害マスター」広島―オリックス戦のジャッジを解説―

[ 2022年6月4日 01:56 ]

交流戦   広島1―4オリックス ( 2022年6月3日    マツダ )

4回2死一、二塁、太田の左前打で二塁走者の野口が生還するも守備妨害をとられ審判に確認する佐々岡監督 (撮影・奥 調)
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 走塁妨害の判定に広島・佐々岡監督が抗議する場面があった。

 オリックス4回の攻撃。2死一、二塁から太田の左前打で二塁走者の野口が本塁を狙うも、左翼手・堂林の好返球で本塁タッチアウト。だが、三塁手・坂倉の走塁妨害があったとして本塁の判定は「セーフ」に変更となった。納得がいかない佐々岡監督は抗議した。

 11年から16年までNPB審判員を務めた私は「お手本のような走塁妨害」と感じた。その理由を(1)適用された定義と規則(2)実際のプレー(3)判定の基準、の順で説明したい。

 (1)適用された定義と規則※抜粋して表記 【公認野球規則 定義51 走塁妨害 野手がボールを持たないときか、あるいはボールを処理する行為をしていないときに、走者の走塁を妨げる行為】【同6.01h(2) 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていなかった場合には、すべてのプレイが終了するまで試合は続けられる。審判員はプレイが終了した後に、必要とあれば、その判断で走塁妨害によって受けた走者の不利益を取り除くように適宜な処置をとる】

 (2)実際のプレー 今回のケースでは走者・野口が、打球に届かなかった三塁手・坂倉を避ける動きをして走路を迂回することになった。これは守備者の「妨げる行為」に該当する。そして、打球が坂倉の横を抜け、「打球に対する守備者」ではなくなったタイミングだったので「ボールを持たない」「処理する行為をしていない」の条件にも当てはまる。よって、走塁妨害のジャッジは妥当だ。

 (3)判定の基準 坂倉が打球を処理しようとしているタイミングでは「守備者優先」となり、走者と接触するなどした場合は「守備妨害」となる。だが、今回のように打球が抜けて守備行為と判断されない状況では「走者優先」に変わり、接触がなくても走者が迂回するなど「妨げる」ことになれば走塁妨害が宣告される。走塁妨害があった走者については、先述の規則に基づいて審判員の判断で進塁が認められる。今回は妨害がなければ本塁は「セーフ」だったと判断された。

 NPB(日本野球機構)でもMLB(米国)でもKBO(韓国)でも同じ基準で走塁妨害が適用されている。(1)(2)(3)を考慮して、もう1度プレーを見てほしい。最初に見た時と見える「景色」が変わっているかもしれない。(柳内 遼平)

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2022年6月3日のニュース