和田毅という奇跡の41歳

[ 2022年2月21日 12:59 ]

ソフトバンク・和田
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 【君島圭介のスポーツと人間】先に登板した千賀滉大の直球が158キロを計測。ソフトバンクファンのざわめきが残る20日の宮崎・生目の杜の球場で、プロ20年目の和田毅が紅白戦マウンドに上がった。

 打席には売り出し中の2年目・井上朋也。和田は22歳年下の大砲候補を追い込むと141キロの直球でバットに空を斬らせた。その後も次々と打者を翻弄(ほんろう)するが、スタンドから見ていると1球ごとに違和感がわいてくる。

 「球種は何?」

 140キロ台は直球だろう。だが、130キロ台の球は直球なのか、変化球なのか。途中でスコアブックに1球ごとの球種を書き込むのを諦めた。

 あとはただ、ファンと一緒に和田の投球を楽しんだ。2イニング目。味方の失策もあり、2死一、二塁で迎えたのは柳田悠岐だった。公式戦では見られない夢対決を制したのはマウンドの左腕だ。違和感のもとである131キロの球で遊飛に仕留めた。

 試合後、和田が正体を明かした。

 「カットボールを試していて打者の反応もすごくよかったので。打者は真っ直ぐだと思って振って、打ち損じたりしている」

 もともと持っていたが、今投げているのは新しく習得したカットボールだという。そこで違和感は既視感に変わった。ホテルに戻って探したのは和田を取り上げた17年2月の当コラムだ。メジャーから5年ぶりに日本球界復帰してリーグ最多の15勝を挙げた翌年のキャンプだ。その年、和田はツーシームに取り組んでいた。

 そのコラムに和田の「年齢的にもいつかそういうボールが必要になる。今は直球で空振りが取れていてもいつ通用しなくなるか分からない。必要になってからではなく、今からやっておく方がいい」というコメントが載っていた。

 あれから5年。今年はカットボールが武器になりそうだ。ただ、和田がすごいのは最多勝に輝いた16年シーズンの直球での空振り率11・2%に対し、昨年は13・0%とむしろ上がっていること。母数(球数)が少ないとはいえ、「浮いてくる」と称される直球が健在だから新しい球種も生きてくる。

 プロ1年目から見てきた。久しぶりに会った和田に「年齢とともに太くなる選手が多いけど、全然体型が変わらない。若々しいね」と声を掛けると「体幹の部分はしっかりやってますけどね」と反論された。

 そして笑ってこう続けた。「今、カーブを改良中なんです。肩の後ろからリリースして曲りを早くするイメージで」。すでにカットボールの次の球に取り組んでいる。和田毅、恐るべし。2月21日は彼の41歳の誕生日だ。(専門委員)

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2022年2月21日のニュース