田淵幸一氏が阪神・佐藤輝に提言 “大谷フォーム”学べ!軸ぶれず余計な体重移動ない打撃研究を

[ 2021年10月29日 07:00 ]

左は大谷、右は佐藤輝の打撃フォーム
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 阪神OBでスポニチ本紙評論家の田淵幸一氏(75)が28日、球団の新人本塁打記録を更新した阪神・佐藤輝明内野手(22)の1年目シーズンを振り返った。田淵氏は打率・238、24本塁打、64打点の後輩に及第点を与えた上で、今後の課題として「体力強化」を挙げ、エンゼルス・大谷の打撃フォームを研究するよう提言もした。

 1年目の佐藤輝には合格点を与えることができる。前半戦の彼の活躍が、阪神に勢いをつけたのは言うまでもない。チームトップの24本塁打。豪快な本塁打で16年ぶりの優勝への期待を膨らませたのも、佐藤輝の力だ。

 だが、前半が素晴らしかっただけに、後半の失速ぶりが好対照を描いた。8月以降は3カ月で本塁打は4本だけ。59打席連続無安打で新人最多三振の173三振。別人のような打撃が繰り返された。

 原因はどこにあるのか。研究してきた相手に対する対策の遅れ、技術的にはタイミングの取り方などの問題もあるが、一番の理由は別のところにある。阪神首脳陣の何人かに話を聞いた。「何が欠けているのか」と聞くと答えは共通していた。「体力です」。まずは、そこが彼の課題だ。

 大学野球とプロでのシーズンは全然違う。試合は待ってくれない。毎日のように続く。その中で体力、気力をどう維持していくか。私も1年目は体力の壁を感じた。佐藤輝も1年間でその点を痛感していると思う。きっと体重も落ちただろう。

 悔しいと思うなら、やるしかない。オフの過ごし方は大事だ。私も1年目のオフは下半身を強化し、体力をつけることに取り組んだ記憶がある。階段上りをしたり、走るのは苦手だったが坂道を走ることを自分に課した。上体の力、腕力だけでは安定した打撃は期待できない。基本は土台となる下半身。そこが安定せず、体力も落ちたから夏以降はフォームが崩れ、体重が残らず、前に突っ込んで空振りを繰り返す悪循環に陥ったと見ている。

 しっかりした下半身があれば左7分、右3分のバランスでボールを迎える形ができる。昔と違い今は動く球を多用してくる時代。足を上げて、体重移動するスタイルでは確率は悪くなる。参考になるのはエンゼルス・大谷翔平の打撃だ。デンデン太鼓(と言っても佐藤輝は分からないかもしれないが)のように、軸はぶれず、余計な体重移動はない。タイミングを右足のかかとの上げ下げだけで取り、球を呼びこむ形をキープしている。彼の打撃を研究することはムダではないはずだ。

 これまでのスタイルには、こだわりがあるはず。だが改善すべきところは改善しないと同じことを繰り返す。無安打記録や三振記録を屈辱だと思うなら、その反省を生かすしかない。遠くに飛ばすコツを理論的に伝えてくれる人、疑問に答えてくれる人との出会いも必要だ。その点は球団にも考えてほしい。

 プロは結果の世界。結果が出ないと努力したことにはならない。相手が認めてこその努力だ。ワンランク上がるためにも、やるべきことをやらないといけない。CS、その先の日本シリーズに向け、いい形で締めることに集中した上で、レベルアップに取り組んでほしい。(スポニチ本紙評論家)

 《2年目伸ばせるか》佐藤輝(神)の1年目24本塁打は新人歴代7位の記録。上位10傑入りしている過去11人のうち、翌年も数字を伸ばしたのは原辰徳のプラス11本を筆頭に3人。4人がマイナス2本以内のほぼ現状維持で、田淵幸一も翌年はマイナス1本の21本。清原和博、長嶋茂雄もここに入る。残る4人は大幅ダウンで、59年新人最多31本の桑田武は半減の16本。61年から7年連続20本塁打以上も、現役引退の70年まで1年目を上回ることはなかった。

 《30日からフェニックス・リーグ参戦》佐藤輝は30日から「みやざきフェニックス・リーグ」に参戦する。平田2軍監督は「状態を上げるも何もないでしょ。試合に来る!出に来る!それだけ」と話したが、1軍では先発落ちも増えていただけに、打席に多く立つことはCSへの格好のたたき台となるはずだ。起爆剤としての存在感はチーム屈指。負けられない戦いを前に、温暖な南国で打棒に磨きをかける。

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