侍胴上げ投手の栗林、拳を天に突き上げた!出られなかったはずの大舞台「いろんなことに感謝」

[ 2021年8月8日 05:30 ]

東京五輪第16日 野球決勝   日本2―0米国 ( 2021年8月7日    横浜 )

<日本・米国>米国を破って金メダルを獲得し、捕手・甲斐に抱えられ右腕を突き上げる栗林(右は源田)
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 栗林は、初戦のドミニカ共和国戦で1失点した試合後、父・秀樹さんにLINEを送った。「次は最初から全力でいく」。それ以降3試合連続無失点。決勝戦の9回も先頭打者から全力で空振り三振を奪った。2死一塁から二ゴロに抑えると、マウンド上で甲斐に抱き上げられた。全5試合に救援して2勝3セーブ。誇らしげに右拳を天に突き上げた。

 「いい投手がいる中で僕でいいのかな…という気持ちはありましたけど、結果で恩返しするしかないという気持ちだった」

 4日準決勝の韓国戦後に秀樹さんから約1分間の動画が送られてきた。家族が集まって栗林の投球をテレビ観戦する映像で、秀樹さんからのメッセージも添えられていた。「良吏のおかげで、みんなが一つ屋根の下に集まったぞ」。妻・沙耶さんが栗林の実家のある名古屋に向かい、兄姉の家族も初めて全員そろって観戦する記念日にもなった。

 その動画の端には手を合わせて祈る祖母が映っていた。中学で硬式野球チームへの入団を両親に反対された際に、近所の練習場を歩き回って軟式野球チーム「藤華クラブ」を見つけてきてくれたのが祖母だった。そんな一番のファンが、五輪の登板だけはテレビから目をそらした。「お父さんに神頼みする」と、亡き祖父の力を借りるために目を閉じて祈ってくれた。決勝戦は祖母の家に家族全員が再集合し、金メダル獲得の瞬間を見守った。

 初めて日の丸を背負ったのは名城大3年時に選出された大学代表だった。「あの頃はプロを強く意識していなかった。周りとの目標の違いを凄く感じた」。大卒ではドラフト指名漏れを経験し、昨年は社会人だった。「延期しなければ出られない大会。いろんなことに感謝しないといけない」。巡り合わせにも恵まれて、胴上げ投手にまでたどり着いた。(河合 洋介)

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2021年8月8日のニュース