専大松戸のマネジャーは3年生より1歳上のお姉さん 特別な思いを胸にベンチ入り

[ 2021年3月25日 22:20 ]

第93回選抜高校野球大会第6日第1試合 1回戦   中京大中京2―0専大松戸 ( 2021年3月25日    甲子園 )

<中京大中京・専大松戸> 打球の行方を見守る専大松戸・飯高マネージャー(右)(撮影・後藤 大輝)
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 第93回選抜高校野球大会第6日は25日、兵庫県西宮市の甲子園球場で行われた。1回戦最後の試合となった第1試合は、専大松戸(千葉)が0―2で中京大中京(愛知)に敗れ、甲子園初勝利とはならなかった。専大松戸のマネジャーの飯高菜緒(3年)さんは記録員としてベンチ入り。特別な思いを胸に激闘のスコアをつけた。

 中京大中京・畔柳亨丞(3年)と専大松戸・深沢鳳介(3年)の投げ合いとなった試合のハイライトは0―0で迎えた7回。専大松戸の深沢は2死二塁のピンチを招くと、甘く入った直球を左前に弾き返された。左翼手の吉岡道泰(3年)は猛然と前進してダイビングキャッチを試みたが、わずかに届かず。打球は無情にも左翼フェンスまで転々とし、決勝のランニング2ランとなった。

 試合後、吉岡は「自分のプレーでチームが負けてしまった」とベンチ前で体を震わせながら大粒の涙を流した。普段は明るい4番打者の背中を飯高さんは「最後じゃない。次に生かせるぞ」と叩いた。同学年だが、1歳上のお姉さんは優しく微笑んだ。

 飯高さんは本来、今年3月に卒業する代だったが、1年間の語学留学を行ったため、1年遅れて来年に卒業する。昨年の夏はコロナ下で甲子園予選は中止となり、同年齢である3年生たちの夢は絶たれた。

 3月5日に専大松戸の卒業式が行われた。OBとなった同年齢の仲間たちはセンバツに向け、練習を行う野球部のグラウンドにやってきた。「飯高は甲子園に行けるからいいな。俺たちの分まで頑張ってくれよ」。かけられた言葉に気の利いた返しはできなかった。でも、思いは持っていこうと思った。

 試合終了後、三塁側のアルプススタンドにあいさつをするため選手と整列した。その時、スタンドで晴れやかな表情をしている同年齢の仲間たちと目があった。「少しは自分の役割を達成できたのかな」。負けても心は晴れやかだった。

 試合後、宿舎に戻った飯高さんは荷物を松戸市に送る準備をしていた。すると、1人、また1人と選手が部屋から出てきた。バットを振る者、ランニングをする者。「夏もきっと戻ってこれる」。そんな予感がした。(柳内 遼平)

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2021年3月25日のニュース