阪神・石井大 満点の甲子園デビュー 開幕1軍ほぼ当確 ドラフト74番目指名の“伏兵”に春

[ 2021年3月11日 05:30 ]

オープン戦   阪神9ー3広島 ( 2021年3月10日    甲子園 )

<神・広>三者凡退で最後を締めて長坂(右)とハイタッチをかわす石井大(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

 憧れのマウンドに立った感動も、打者に対した瞬間に心の奥にしまい込んだ。甲子園初登板のドラフト8位・石井大(四国・高知)が、気迫満点の投球で3者凡退デビュー。2月16日楽天戦から対外試合は登板5試合連続無失点とし、異色の経歴を歩んできた右腕が、開幕1軍入りをほぼ当確させた。

 「高校の時は無縁だと思ってたところ。そのマウンドで投げられる喜び、投げて楽しかったですし、そういうのを感じながら投げられた。(景色は)集中しすぎて、周りが見えていなかった」

 9回に登板し、いきなり対決したのが球界最強打者の一人、鈴木誠。初球真っすぐでストライクを取った後、右翼に飛球を打ち上げられたが、球威が勝って右飛に仕留めた。「そこはぶれずに、どんな打者であっても真っすぐで。(6日の)ペイペイドームでも同じようにやってきたんで」。持ち味の強気の投球を本拠地のファンに見せつけ、正随を遊飛、9日に満塁弾を放ったクロンは148キロ直球で空振り三振。計11球で試合を締めた。

 工業系の仕事に就職を志望し、中学卒業後は秋田高専に入学。高専時代はプロはもちろん、甲子園もとても手が届かない夢舞台だった。その後メキメキと力を付け、18年に四国・高知に入団。昨秋のドラフトで12球団で最後の74番目で指名された“伏兵”が、開幕1軍どころか、勝ちパターンの中継ぎ陣に食い込もうとしている。

 10年前の「3・11」は地元・秋田で震災を経験した。「授業が全部終わってトイレにいる時だった。めまいみたいな感じで“やばいな”と思ったら揺れていた。その後、停電して、停電が収まった後にテレビをつけてみると、悲惨な状況というか」。当時の東北の惨状は今でも頭に焼き付いている。

 「言い方は変ですけど、ちゃんと生きられていることに感謝しながら。10年たってもその思いは変わらない」

 新人とはいえ、積んできた経験は他者とはひと味違う。楽しみな右腕が甲子園に見参した。 (山添 晴治)

続きを表示

この記事のフォト

2021年3月11日のニュース