エンゼルス・大谷 3年目終え年俸調停権取得 査定前例なし、二刀流の価値は?

[ 2021年1月12日 05:30 ]

前例のない二刀流がどう評価されるのか注目される大谷(AP)
Photo By AP

 エンゼルス・大谷翔平投手(26)が取得した年俸調停権が注目を集めている。1年目は規定によりメジャー最低年俸の54万5000ドル(当時約6160万円)で2、3年目は微増で契約(昨季は試合減で減額)。3年目を終えて調停権を手にし、今月15日(日本時間16日)に選手と所属球団が希望額を提出する期限を迎える。二刀流がどう査定されるか。大物選手の調停額を何度も的中させているエコノミストのマット・スワルツ氏(39)が予想した。(奥田秀樹通信員)

 米球界で特徴的な年俸調停のシステムは1973年のオフに導入された。メジャーでの出場登録が原則3年以上、6年未満の選手に与えられる権利で1、2年目は球団が決めた通りの年俸になるため、大谷にとって交渉で増額するチャンス。10年代に投打で活躍したベーブ・ルース以来の本格二刀流が、初めて対象となる。

 米移籍情報サイト「トレード・ルーマーズ」などに寄稿するスワルツ氏は、アイビーリーグのペンシルベニア大卒。ナショナルズの顧問も8年間務めており、昨オフにはベッツ(当時レッドソックス、現ドジャース)、ブライアント(カブス)の年俸を、数十万ドル違いで的中させた。

 「大谷はDHだけの選手ではない。代理人は二刀流であることの特有性、価値を強調するだろう」。一方で、調停で重要なのは過去に同等の活躍をした選手の事例。投手なら投球回数、勝利数、防御率など、打者なら打席数、本塁打、打点などを材料に近い年の選手の昇給額と比べる。二刀流の大谷にはサンプルがない。スワルツ氏は「ずっと多い金額を与えられるべき」とした上で、「DHの打者としてだけなら200万~300万ドル(約2億800万~3億1200万円)」と現実的な予想として以下の数字をはじき出した。

 昨季は70万ドル(当時約7500万円)も、コロナ禍による60試合制で25万9000ドル(同約2800万円)。

 (1)昨季の60試合制からそのまま割り出した場合=210万ドル(約2億1840万円)。

 (2)例年通りの162試合制に置き換えた場合=300万ドル。

 大谷の場合、162試合に置き換えると打者では473打席で19本塁打、65打点(打率・190)。大リーグ機構と選手会の間で換算方法について合意できなかったため、2通りの数字となった。公聴会まで持ち込まれた場合、どちらを選ぶかは調停人が判断する。

 投手では右腕の故障もあり昨季は2試合の登板にとどまったため、スワルツ氏は今回の予想材料には含まなかったという。「私は投手が先発とリリーフの両方で投げている場合、両方のモデルを計算した上で、金額が高い方で出す。二刀流でもそうすることが理にかなっていると考えた」と話した。

 大谷がFAとなるまでに、調停権は今回含め3シーズンある。4年目の今季、例えば2桁勝利と2桁本塁打をマークした場合はどうなるのか。

 「近年の野球選手で、比較できる者は存在しなくなる。成績が誰とも似ていない」。ただ、10勝&10本塁打以上となればMVP級の活躍。タイトル獲得も重要な評価基準だ。

 「今回が200万~300万ドルなら、1000万ドル(約10億4000万円)くらいに跳ね上がると予想する。もし、二刀流が評価されて今回400万~500万ドル(約4億1600万円~約5億2000万円)に上がる場合は、1200万ドル(約12億4800万円)くらいになるとみる」

 1世紀ぶりの二刀流。大谷の評価には、どのような「ニューノーマル」が適用されるだろうか。

 【年俸調停Q&A】
 ――なぜ大谷は低年俸だった?
 大谷は契約時の年齢が23歳。大リーグは新労使協定で、25歳未満の海外選手はマイナー契約からスタートし、メジャー昇格後も最低保証額となることが規定されています。20年のメジャー最低保障額は56万3500ドル(約5900万円)程度でした。

 ――年俸調停の仕組みは?
 1月中旬に申請日と、選手側と球団側の希望額提出期限(今年は15日=日本時間16日)が設定され、その日をメドに交渉が進みます。調停人による公聴会は今年は2月1日(日本時間2日)~19日(同20日)。提出期限以降も交渉を進めることは可能です。調停ではどちらかの希望額を採用。「間を取る」ことがないため、双方でギリギリまで妥協点を探り、実際に公聴会にもつれ込むケースは少ないです。昨年は大リーグ全体で12件(球団側の7勝5敗)でした。

 ――調停権1年目選手の最高額は?
 19年オフにドジャースの外野手ベリンジャーが勝ち取った1150万ドル(約11億9600万円)です。同年は打率.305、47本塁打、115打点でナ・リーグMVP。2年目の60万5000ドル(約6290万円)から約19倍も上がりました。

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月12日のニュース