巨人・山口オーナー セDH導入提案、他球団に建設的議論求める「対案あるならぜひ」

[ 2020年12月23日 05:32 ]

巨人・山口オーナー インタビュー(下)

選手負担軽減のためのセ・リーグでの来季暫定的なDH制導入について語る巨人・山口寿一オーナー

 巨人の山口寿一オーナー(63)が取材に応じ、14日のセ・リーグ理事会で提案したセ・リーグへのDH制導入について真意を説いた。コロナ下での選手負担軽減を目的とした来季限りの暫定措置で、恒久的な導入とは別と強調。試合数が増え日程も変則的な来季は今季よりも困難なものになると予想し、選手を守るために必要と訴えた。実施時期や方法などは柔軟に変えていく姿勢を示し、他のセ5球団に建設的な議論を求めた。(聞き手・後藤 茂樹)

 ――部分的に導入する際の具体例は?
 「日本の野球で初めてDHを実行した試合は、恐らく69年の東西対抗戦。当時は指名代打者が投手の打順で1回だけ打席に立てる、というものでした。こういう部分的導入でもいいと思います。何か対案があるならばぜひ出していただきたい。DH制のみに決してこだわるわけではない」

 ――反対派には野球は9人でやるもの、という意見もある。
 「それは非常によく理解できます。DH制について日本球界で大議論が巻き起こった70年代、最も強く反対したのが巨人軍の川上哲治監督でしたから。理由が“そんなことしたら邪道に走る”と。正統派はこちらなのだと、我々もそう思ってきました」

 ――今季の開幕前にも、DH制導入については議論されたのでしょうか?
 「今季の開幕前にはDH制の導入議論はやっていないんですね。感染防止と公式戦の日程を両立させるための検討で手いっぱいで、余裕がなかったのが実情。コロナの中での公式戦が通常の年とは違う負担になるので、軽減させて故障を少しでも防ぐところまでは考えが及ばなかった。本来はそこで検討すべきだった。メジャーリーグでナショナル・リーグがDH制を導入すると決めたのを知って、故障を防ぐという視点からのルール改正はちょっと抜かったなと思いました」

 ――1月以降の理事会などでもA案、B案などを提案するのでしょうか?
 「故障防止に役立つと思われるものを提案し、検討をお願いする。取り合っていただけないかもしれないが、提案していくことは変わらずやっていきたいと思っています」

 ――コロナ対策という観点ならば、導入へ時期的なリミットは設けず議論すべきでは?
 「おっしゃる通りです。おおらかに、かつ真剣に議論し、できるだけオープンにしてファンの方々も巻き込んだ意見交換が行われ、最も良い対策が実施されていくのが望ましいと思っています」

 ≪「部分的」例に69年東西対抗≫69年11月8日に行われた東西対抗第1戦(西京極)では、東軍の水原茂監督と西軍の三原脩監督が話し合い、コミッショナーの承認を得てDH制を採用した。9日付のスポニチ紙上では「投手の打順に、代打専門打者が立つ新方式で、このルールは既に米国のマイナーリーグで採用されている」としている。また、宮沢俊義コミッショナー(当時)は「交流ということでルールを変えても弊害がないから認めた」と話した。

 【DH制導入提案経過】
 ▼19年10月24日 巨人・原監督がオーナー報告で「(セも)DH制は使うべき」と提言。日本シリーズでソフトバンクに4連敗し「DH制というので相当差をつけられている感じがある」。高校野球ではレギュラーが9人から10人に増えることから「教育的」という持論が根底にあり、球界発展に話を広げた。
 ▼20年11月19日 NPBが日本シリーズで全試合DH制を導入すると発表。コロナ禍による過密日程で投手の負担軽減のためソフトバンクが申し入れ、臨時実行委員会で特例として決定。巨人以外のセ5球団から難色を示す声も出たが、斉藤惇コミッショナーが判断。
 ▼同12月3日 大阪市内で毎年恒例の選手会大総会を実施。炭谷会長が、集まった12球団の選手会長や副会長ら25選手に「セ・リーグのDH制導入に賛成か反対か」という趣旨のアンケートを行い9割以上が賛成。「(コロナ下で)投手の負担が減るのはありがたい」や「国際大会でも採用しているし、自然な流れ」という意見が多かった。
 ▼同14日 巨人がセ・リーグ理事会で来季、暫定的なDH制導入を提案。山口寿一オーナー名で提案書を提出したが、賛同を得られずに見送られた。コロナ下での投手の負担軽減、野手の出場機会増などを理由に掲げ、他球団から「巨人が提出した文章を公表するなら議論に応じない」という意見も受けたが、公表に踏み切った。

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