07年以来14年ぶりの準硬式出身白星へ 西武ドラ5右腕大曲に、“投げる化学者”がエール

[ 2020年12月23日 09:30 ]

現在は化学メーカー「クラレ」に勤務する元西武の山本歩(本人提供)
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 久しぶりに準硬式出身のプロ野球選手が誕生する。西武がドラフト5位で指名した福岡大準硬式野球部の右腕・大曲錬投手(22)。最速154キロの直球はドラフト前から高評価を得ており、決してサプライズ指名ではなかった。

 特に西武は過去にも準硬式出身選手を指名した実績がある。99年6位で同大の右腕・青木勇人(現3軍投手コーチ)、05年大学・社会人ドラフト5巡目では関学大で公式戦通算42勝を挙げた変則サイド右腕で大学日本代表のエースとしても活躍した山本歩を指名した。理工学部出身で「投げる化学者」として話題となったが、1軍では計5試合の登板で0勝0敗、防御率2・84。わずか4年間で現役生活を終えた。

 記者は関学大準硬式野球部出身で山本歩氏の2年後輩。現在、化学メーカー「クラレ」に勤務する山本氏を取材する機会に恵まれた。「現役時代を振り返って後悔はありますか?」と質問すると、すぐに返ってきた答えは「キャッチボールのやり方を変えたこと」。入団直後に遠投で上から投げていると「投球と同じフォームで投げなきゃ意味がないだろう」と指摘を受けたことがきっかけだったという。「僕としてはスピンを意識するために上から投げていたけど、遠投もサイドスローで投げるようになり、段々とフォームがおかしくなった」。プロ2年目の07年に1軍デビューも08年オフに右肘をクリーニング手術。結局、07年以降は1軍に上がることはなかった。

 山本氏以降、大学の準硬式野球部からのドラフト指名選手は09年に巨人育成5位で群馬大の右腕・神田直輝、同年広島6位指名で早大から王子製紙に進んだ左腕・川口盛外。直近では16年に楽天6位で帝京大の左腕・鶴田圭祐、同年に巨人育成4位で山本歩と同じ関学大の右腕・坂本工宜が指名された。全て投手の指名だったが、いずれも1軍で白星を挙げられずに戦力外通告を受けている。

 山本氏は準硬式野球出身のプロの“後輩”にあたる大曲にエールを送った。「大曲選手には準硬式で結果が出ていた練習や考え方を自分の貫ける範囲で貫いてほしい。プロでストライクゾーンが狭くなって悩むと思うけど、何歳になっても速い球を投げられることは魅力。同じ準硬式出身の青木コーチを頼って、息の長い選手生活を送ってほしい」。

 大学の準硬式野球部出身の投手の白星はその青木が広島に移籍後に記録した07年までさかのぼる。大曲はドラフト直後に「目標は勝てる投手になること」と話している。ポテンシャルの高さは疑いようがない。準硬式出身の投手が1軍で白星を挙げる姿を是非とも見たい。(記者コラム・柳原 直之)

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2020年12月23日のニュース