【内田雅也の追球】想定外の「路地」打球 青柳が再三破られた三塁線 二塁打数の違いが打線の差?

[ 2020年9月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-6DeNA ( 2020年9月9日    横浜 )

<D・神14>5回無死、梶谷は左翼線二塁打(撮影・小海途 良幹)
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 テニスコートで、ダブルスの時は使うがシングルスでは使わない、両側面の細長い部分をアレーゾーンと呼ぶ。アレー(alley)は小道、細道、路地……などといった意味だ。

 野球場にもアレーはある。アメリカの俗語で左翼線や右翼線をアレーと呼ぶ。広い左中間、右中間に対して両翼ライン寄りは狭い。テニス同様、路地に見立てている。

 5回4失点で降板となった阪神先発の青柳晃洋はこの路地への打球を4本浴びて崩れた。被安打8本のうち5本が二塁打(残る3本は内野安打)で、うち4本が左翼線だった。順にあげる。

 1回裏、1死一塁からネフタリ・ソトに外角スライダーを引っ張られ、左翼線へライナーで運ばれ同点。続く佐野恵太は高め直球を反対側に打たれ、三塁線をゴロで破られて2点目を失った。

 4回裏は無死一塁で宮崎敏郎に内角低めシュート(ツーシーム)を引っ張られ、ゴロで三塁線突破、ピンチを招いた。

 5回裏先頭、梶谷隆幸に外角シュートを反対側へ巧打され、またまた三塁線をゴロで破られた。2失点の足場となった。

 文字通り「再三再四」三塁線を破られたわけで、三塁手(大山悠輔)の守備位置を疑問視する声があるかもしれない。

 だが、これらの打球は想定外と思われる。近年は特に打者別、カウントや球種別に打球傾向を割り出し、分析が進む。野手の位置取りも細かな指示が出る。試合前に確認し、コーチが分厚いファイルをベンチに持ち込んで再確認している。

 ソトのライナーは三塁手頭上を通過するもので守備位置は無関係だが、残る3本の三塁線ゴロはデータにはない打球だったのではないか。

 青柳は今季、DeNA相手に過去3戦2勝と相性は良かった。敗戦後、投手コーチ・福原忍が「打たれたヒットも内容はゴロもあったし、ボール自体はそんなに悪いとは感じていなかった」としたうえで、相手の研究や工夫を口にした。「ツーシームを反対方向に打ってきたり、向こうも対策をしてきている」と感じていた。梶谷の三塁線打球はまさにツーシーム(シュート)を反対側に打ったもので、テニスで言えば、バックハンドでクロスに打つような打法だった。

 つまり、阪神が抱いていた従来の感覚でいけば、まさかの打球が相次ぎ、まさかのKO降板だったと言える。

 ただ、何も青柳が崩れたということだけが敗因ではない。打線は初回の1点だけでゼロ行進だった。

 阪神とDeNAでは打撃の違いが浮き彫りとなった試合でもあった。この夜、DeNAが放った二塁打は実に6本に上った。阪神とDeNAは本塁打数こそ66―68と小差だが、二塁打の本数は85―116と大差だ。DeNAは外野手の間を抜く低い打球が多いと言えるだろう。

 一方、この夜、阪神はフェンス手前まで運んだ大飛球が3本(3回表・近本光司中飛、5回表・梅野隆太郎左飛、7回表・大山悠輔右飛)あったが、いずれも捕らえられた。流行のフライボールではなく、ゴロやライナーで差が出た格好だと言える。

 首位巨人への挑戦権を懸けた2位攻防で辛い連敗となった。

 9回表2死、「あと1人」で大山が打席に立った時、大粒の雨が降りだした。涙雨だろうか。大山は追い込まれながら、そして内角速球に詰まりながら、遊撃左に内野安打してみせた。

 野村克也は<人間は窮地に追い込まれるほど本性が現れる>と書いている=『弱者が勝者となるために――ノムダス』(ニッポン放送プロジェクト)=。そして<9回2死、最後の打者となった時、本性が見える>。

 ならば、大山の放った地味な安打にも意味はある。監督・矢野燿大も「最後の悠輔の、ああいうヒットは意味があると思う」と話した。

 貯金は使い果たしたが、猛虎はまだ死んではいないと思える。そんな一打だった。=敬称略=(編集委員)

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