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聖地守る「阪神園芸」、球春到来信じ準備着々「野球ができる状態は常に作っています」

[ 2020年5月15日 05:31 ]

甲子園球場
Photo By スポニチ

 甲子園は待っている! 政府が一部の「特定警戒都道府県」を含む39県に対して緊急事態宣言の解除を正式決定した14日、兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場の今を追った。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月19日に開幕予定だった選抜は初の中止。プロ野球も開幕延期を繰り返し、最短6月19日を視野に調整中だ。そんな中、野球の聖地を守り続けるのが阪神園芸。野球ファンと同様に、球春到来を信じて準備を進めている。

 甲子園球場は3月8日の巨人戦を最後に季節外れの静寂に包まれたままだ。今年、開催された試合はわずか3試合。すでに初夏の姿に様変わりした野球の聖地には、再び歓喜が戻る瞬間を待ち望む職人たちがいた。

 「試合がないのはすごく違和感を感じますね。この気候でね。試合が見られないというのは…。寂しいです」

 本紙の電話取材に、複雑な心境を吐露したのは阪神園芸で甲子園施設部長を務める金沢健児(52)さんだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響でチームの活動は3月26日から停止。球団施設は閉鎖され、使用も禁止された。4月7日には緊急事態宣言が発令。外出自粛が強いられる状況でも、土や芝など“生き物”を相手にする阪神園芸の職員たちは甲子園を守っていた。

 「リスク回避で甲子園と鳴尾浜で4班に分けての作業を、実際は4月2日からしています。特に芝生は伸びるので。最小限の人数と、時間も短時間にして作業を始めました」

 感染リスクを回避するため、通常は15人の人員を削減。日替わり体制で作業に着手した。他部署からの応援を受けて自主練習が再開された4月15日以降も、感染防止に神経を使いながらの業務を継続。「選手たちとは接触しないようにしています」。5月2日と6日には2回に分けて、夏芝への一部張り替え作業も終えた。

 「野球ができる状態は常に作っています。いつ始まっても大丈夫という気持ちで、毎日ね。大震災を経験している者からすると、やはりスポーツの力は大きい、励まされるというのはあります。無観客で始まったとしても、甲子園で選手が躍動している姿を見ると勇気付けられると思う」

 金沢さん自身は1995年の阪神淡路大震災で最愛の母・静江(享年52)さんを奪われた。やり場のない苦境に見舞われた一方で、「スポーツの力」に励まされ、勇気づけられた経験も持つ。今年は選抜大会が中止となり、プロ野球の開幕も未定。ただ、希望と終息への願いから商売道具のトンボを握る手にも力が入る。

 「この甲子園球場で、選手たちがプレーする姿を一日でも早く、見られるようになってほしいと思いますね」

 すでに「神整備」と評される高い技術で開幕への準備を整えていた。甲子園は待っている―。聖地を守る精鋭部隊も、選手やファンと同様に球春到来への歩みを止めない。(山本 浩之)

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