【侍J金メダルへの道】激闘支える管理栄養士 食事メニューに細かな気配りも

[ 2019年4月26日 12:00 ]

ザバスの管理栄養士・大前恵さん
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 【侍ジャパン~2020東京五輪金メダルへの道~栄養サポートパートナー・ザバス(上)】

 世界と戦う侍ジャパン全世代を支えるのが、「栄養サポートパートナー」のザバスだ。株式会社「明治」は、14年にオフィシャルパートナーとして取り組みを始め、同社のプロテインブランド・ザバスが栄養面を全面サポート。トッププロが集う代表チームの栄養補給から台所事情まで、強いカラダをつくり上げ、整えていく取り組みとは。(取材・構成 後藤 茂樹)

 腹が減っては、戦はできぬ。国内外での国際大会や強化試合、合宿など。代表活動期間はザバスの管理栄養士が同行し、さまざまな形で侍ジャパンの激闘を支えてきた。

 今年3月9、10日と京セラドームで行われた強化試合・メキシコ戦。大阪に集合した侍ジャパンの、宿舎での食事メニューを簡単に紹介すると以下の通り。

 バイキング形式で、種類豊富なサラダ、フルーツ、ヨーグルトが並ぶ。炭水化物としてご飯やパン、パスタや麺類。主食となるたんぱく質は牛、豚、鶏肉を使ったメニューや、うなぎまで。温野菜や汁物も充実して、とにかく品目が多いのが特徴だ。

 メニューは宿舎側と、管理栄養士の大前恵さんで入念に打ち合わせて決める。代表活動を重ねて定着してきた品目が多いが、今回も細かな指示が何点か大前さんから飛んだ。

 「サラダにボイルしたささみを足してもらって。筋力アップや増量したい人が、たんぱく質をおかずだけで食べると、苦しくなってしまうので。サラダに足すと、割とすんなり食べられる。元からあるツナだけだと飽きてしまうので、ささみと交代で出してもらって」

 ご飯は宿舎側から「ビタミン強化米」が提示されていたが、「“普通のご飯”にしてほしい」と差し戻した。

 「普通のご飯の方がおいしいので。ビタミンが欲しい選手は、サプリメントを持っているし、プロテインにも入っている。わざわざそこでしなくても大丈夫です、と」

 一方で、白米とともに玄米を配備する。減量中の選手や「血糖値を上げたくない、という選手もいる。そこで代用してくださいね、と」

 専門知識による指導、プラス細かな気配りが随所に見える。例えば、代表常連となりつつある西武・源田は、朝食にフレンチトーストが欠かせないという。「そうした知っている選手が来る時は用意したり。ちょっとしたリクエストにも対応します」と心身の充実をはかる。

 トップ選手の集団。ゼロからの食育が求められる場ではないし、12球団から選手が集まる代表で食事会場は、大事なコミュニケーションの場でもある。

 アルコールも置く。「出しますけど、みんなそんなに飲まないですね。缶ビール1杯とか」。アルコールの代謝にビタミンB1が使われる、解毒たる分解に肝臓の働きが優先される、などの理由で疲労回復面でアスリートには向かない。

 一方で「食欲を出したり、リラクゼーションの効果もある。お酒の場合は、多少プラスに働く面もあるので。量の問題と、作用を分かって飲んで下さい、ということですね」とたしなむ分には自制に任せている。

 「パフォーマンス自体はそもそも凄い選手たちが集まっていて、自己管理もできるのが前提だとは思っています。メニューも、その妨げにならないように、と。代表の短い期間で急に向上したい、という選手もいないでしょうし」と大前さん。それでも空いた時間を見つけ、個々の相談に乗り、助言を送る。「栄養への考え方のきっかけや、気付きは与えられるので。そういうことに使ってもらえたらいいんじゃないかなと思っています」

 アスリートを取り巻く食環境や、意識、知識の高まりは、近年急速に進んだ。侍ジャパンの栄養面を全面サポートし始めた14年には、栄養士を置くプロ野球チームは片手で数えるほどだった。今ではほとんどの球団に栄養士がついている。侍ジャパンは選手だけでなく、打撃投手やブルペン捕手ら裏方さんや、トレーナーも各球団からその都度招集される。彼らは代表で学んだ知識を所属球団に還元してきた。「侍ジャパンの栄養的な取り組みの影響は、球界には大きかったのではないかと思っています」と大前さんは振り返る。

 球団ごとに異なる補給の知識、方法や、コンディショニングなど。選手だけでなくトレーナーらが意見交換する場にもなっていった。「皆さんそうした情報を持ち帰り、契約更改の場で球団に改善を訴えたり。そうした広がりを見て、やってきた意義というのがプロ野球に限っていうとあったのかなと思いますね」と大前さん。代表活動期間中にとどまらず、徐々に球界全体へと意識改革の波は広がっていった。

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2019年4月26日のニュース